[PR]

 大阪都構想の住民投票(11月1日)では、大阪市民のうち外国籍の住民に投票権がない。自治体独自の条例で住民投票権を認めた例は全国にあるが、今回は法律で投票権が限定されているためだ。(玉置太郎)

 「『4世』にもなって、これだけ社会に根付いて、まだ投票権がないのはなんでや、って思う」

 曽祖父の代から大阪市生野区で暮らす在日韓国人4世の金(キム)カラクさん(22)はこう語る。福祉事業所で働く傍ら、ボランティアで市内に住む外国人家庭の子どもの学習を支援する。「政治に参加する権利がないことは、この子らにも障壁であり続ける。しんどい立場におかれたマイノリティー(少数者)こそ、政治の影響を受けるのに」

 パレル・ハンズ2世さん(26)=平野区=は11年前、フィリピンから父親が働く大阪へ。夜間中学、高校、大学を経て、今は府立高で講師を務める。「何年住んでも、やっぱり外国人のことは後回しにされるんだと感じました」という。

 前回同様、住民投票は2012年に成立した大都市地域特別区設置法(大都市法)に基づく。同法は投票権について、公職選挙法を踏まえて日本国籍をもつ人に限っている。大阪市は住民の5%にあたる約15万人が外国籍で、政令指定市で最多。うち金さんのような在日コリアンら「特別永住者」が約5万人、10年以上の居住歴があり、法務省が永住許可を認めた「永住者」が約3万人を占める。

「日本国籍を」「国籍はアイデンティティー」

 松井一郎・大阪市長は昨年11月、会見で外国籍住民の投票権について問われ、「意見を言うためには、ぜひ日本国籍を取得してもらいたい」と述べた。ハンズさんは「ずっと日本に住むつもりでも、アイデンティティーとして国籍は持っていたい」と言う。

 こうした状況の中、あるグループが投票権を求める活動を続けている。日本国籍、外国籍の市民らからなる「みんじゅう(みんなで住民投票!)」だ。

 きっかけは15年の前回投票日、発起人の小野潤子さん(62)=阿倍野区=がSNS上で見つけた在日コリアン男性の投稿だ。「俺だって大阪市民や」。そこで外国籍の住民に投票権がないことを知った。「ずっと心にひっかかっていた」

 知人らと活動を始めたのは、2回目の住民投票が現実味を帯びた昨夏。つてをたどって呼びかけ人を募り、劇作家の平田オリザさんやミュージシャン、弁護士、大学教授ら20人が応じた。3万人超の署名を集め、国会に大都市法改正を求める請願を2度出したが、いずれも審査未了で事実上の廃案となった。大阪市議会に「国会への意見書提出」を求めた陳情も、各会派の意見がまとまらず継続審査のままだ。

 それでも投票日まで、外国籍の大阪市民に都構想の賛否などを問うアンケートを続ける。小野さんは言う。「声を聴こうとする姿勢だけでも示したい。投票権の問題は、私らマジョリティー(多数者)こそが当事者なんです」

「日本国籍剝奪の歴史考慮を」専門家

 大阪市の市民団体「国民投票/住民投票情報室」の調査では、永住外国人に投票権を認めた住民投票は、これまで少なくとも206件。2002年に滋賀県米原町(現米原市)が周辺自治体との合併を問う住民投票条例で初めて認めて以降、全国に広がっている。

 条例で住民投票を定めている自治体でも、広島市(03年施行)は永住者▽川崎市(09年同)は在日3年を超える人▽大阪府豊中市(同)は住民登録した全員の投票権を認める。ただ大阪市によると、今回のように法律に基づく住民投票で、投票権を認めた例はない。

 外国人参政権に詳しい近藤敦・名城大教授(憲法学)は今回の住民投票を踏まえ、「地域に密接に結びついた永住者らに投票権がないのは、住民自治の観点から問題がある」とした上で、「『多文化共生』が語られる中、政治参加の重要性については認識を欠いたままだ」と指摘する。

 外国籍住民の投票権をめぐる議論の背後には、選挙権を含めた参政権をどうとらえるかの問題がある。

 最高裁は1995年、在日コリアンらが選挙権を求めた訴訟で、永住外国人らに地方選挙権を与えることを憲法は禁じていないとの判断を示す一方、「国の立法政策にかかわる事柄」とも指摘し、請求を棄却。この判断を受け、立法の動きもあったが、反対も根強く立ち消えになることが繰り返された。

 また在日コリアンへの地方選挙権の保障は、18年に国連の人種差別撤廃委員会からも勧告が出されており、近藤教授は「戦後、日本国籍が剝奪(はくだつ)された歴史を考慮する必要がある。選挙より生活に身近な住民投票では、なおさらだ」という。

外国人の参政権をめぐる動き

1950年 国会議員と地方の首長・議員の選挙権を日本国籍者に限定する公職選挙法が施行

52年 政府の通達で在日朝鮮人らが日本国籍を失う

95年 最高裁が「憲法は永住外国人に地方選挙権を与えることを禁じていない」との判断を示す

99年 自民・自由・公明3党が永住外国人への地方選挙権付与を盛り込んだ連立政権合意書に署名

2000年 公明・保守両党が永住外国人の地方選挙権を認める法案提出

02年 滋賀県米原町(現米原市)議会が永住外国人に投票を認める住民投票条例案を可決

10年 民主党政権が永住外国人の地方選挙権を認める法案を提出する方針を示したが、党内外の反対で見送り

12年 住民投票権を日本国籍者に限った大都市地域特別区設置法が成立

15年 大都市法に基づく住民投票で、大阪都構想が否決

18年 国連の人種差別撤廃委員会が在日コリアンに地方選挙権を認めるよう日本に勧告

20年 大阪都構想の是非を問う2回目の住民投票