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 来日して18年。ザ・リッツ・カールトン大阪(大阪市北区)のフランス料理店「ラ・ベ」で料理長を務める。ミシュランの一つ星を2021年版も含め10回獲得した。日本の食材も採り入れながら、「オリジナリティーの強いフランス料理を提供している」と自負する。

 神戸の海の近くに住み、約1時間かけて店に通う。これまで常に海のある場所で暮らしてきた。店名「ラ・ベ」も仏語で湾の意味だ。「職場までは少し遠いが、私には海が必要」と笑う。

 妻は日本人。18歳の息子は関西弁と仏語を話す。休日には、スポーツタイプの自転車で海岸沿いを走るのが楽しみだ。

 仏ブルターニュ地方の出身で、父親はパティシエだった。一度は父親と同じ道を目指したが、毎朝、砂糖とバターの香りを嗅(か)ぐのが苦痛に。逃れようと料理人を志して調理師学校に入り、パリやニースの名店で腕を磨いた。休暇で日本を訪れた際にランチを食べた「ラ・ベ」で当時の料理長に「一緒に働かないか」と誘われた。2002年に副料理長、06年に料理長に就いた。

 フランス料理の魅力を「世界で一番、ふくよかでリッチな料理。おいしくて華やかで暖かい」と語る。来日直後は、母国で学んだ料理をそのまま再現しようとしたが、食材がまったく違い、「不可能だった」という。「日本の食材を取り入れるところからスタートした」と振り返る。

 好きな和食はうどんなどのシンプルな料理だ。目の前で湯気が上がる大阪名物のお好み焼きやたこ焼きには、インパクトの強さを感じている。

 それを意識したわけではないが、代表作の「オマールブルーの海草蒸し」は、土鍋を使って客の前で蒸し上げ、目も楽しませる。和のテイストも含まれているようだが、「どんな食材を使ってどの料理を仕上げるときも決して揺らがないのは、フランス料理だと感じられること」。完璧さにこだわる。

 日本の魅力は「少し旅すれば、雪が降っていたり南国だったり、海から少し歩けば山があったり、四季によってまったく違う景色になったり、地域によってしゃべり方も食材もまるで違うこと」だ。そうして日本国内を旅すると、「知らない食材がまだたくさんあることに気づく。もっともっと採り入れたい」。

 日本の食材は素晴らしく、料理人として意欲をかき立てられる。「最高の環境」という「ラ・ベ」で、さらなる高みをめざす。(後藤泰良)

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 クリストフ・ジベール 1987年に専門学校を卒業。ホテルなどで修業を積む。当時のフランスは徴兵制が残っており、91年から1年間の兵役につく。94年には国内のホテルで部門シェフとなり、その後もパリ、モナコ、ニースの店で、部門シェフや副料理長として経験を積んだ。

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