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 生まれつきの脳性マヒのため手足が自由に動かせず、言語障害もある。でも、青森市の佐藤涼(さとうりょう)さん(40)はピンチをチャンスに変える力の持ち主だ。

 福祉NPO法人理事長と画家の「一人二役」をこなしている。障害のある仲間たちとエッセー集「らいふのことだま」をまとめ、9月に100部を発行した。軽妙な文章と手づくりした本の風合いが好評で、ほぼ完売になっている。

 エッセー集づくりを思い立ったのは、新型コロナウイルスの影響があったから。おもに精神疾患を抱える人たちが軽作業をする就労継続支援B型事業所「C―FLOWER(シー・フラワー)」を青森市で運営しているが、今年の夏は地域の祭りが中止になり、例年請け負っていた祭りのパンフレットづくりがなくなった。

 事業所の仲間は20代から70代までの16人。毎年の励みになっていた作業が失われ、みな気落ちしていた。「モチベーションを上げる着火剤が必要だ。全員で携われる何かをつくろう。本がいい」。文章は自分で書き、イラストや製本は仲間で分担することにした。

 画家として開設しているホームページに、好きな言葉を紹介するコーナーがある。その言葉の数々をタイトルにして、30編のエッセーをつづった。文章には自身の体験を踏まえた、キラリと光る言葉がちりばめられている。「苦い味、辛い味を知らないと、甘い味のありがたみなんてわかるわけがない」「半歩でも動けたなら、景色は変わる」「年齢にこじつけて、目標を持たないのはただの逃げだ」――。

 1編ごとに仲間がイラストや写真を添え、印刷や用紙の裁断などすべての工程を手作業で仕上げた。奥付には担当者が記されている。「以前は名前を公表したがらなかった仲間が、すすんで名前を載せたのです。自信を持ったようで、うれしかった」

 フェイスブックの友人に県内の書店「成田本店」の店長がいた縁で、エッセー集が店頭で販売される幸運にも恵まれた。「力を合わせてつくった本が世に出て、多くの人に読んでもらえた。みんなの顔が生き生きとして、一体感と充実感にあふれました」と喜ぶ。

 画家としては、口に鉛筆や筆をくわえて人物や風景を描く。ぬくもりのある画風は県内外の個展で評価され、米国でも知られる。その知名度も役立った。「障害があって一般就労が難しい人たちでも、チームワークで本を仕上げることができた。就労継続支援という事業を知ってもらうきっかけになれば、何よりです」(渡部耕平)

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