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 経済的な理由や虐待などで実の親と暮らせない子どもを受け入れる「里親」が、京都市で不足している。里親を支える仕組みが弱いのが一因だという指摘もあり、改善に向けた模索が続いている。(高井里佳子、向井光真)

 森永和美さん(56)が里親になったのは1999年。会社員の夫と5年ほど続けた不妊治療がうまくいかず、それでも子どもが欲しくて、京都市内の児童相談所で登録した。

 いま、夫妻は京都市山科区の自宅で4人の「息子」と暮らしている。21歳と17歳になる2人とは特別養子縁組をして、戸籍上の実子にした。さらに、11歳と1歳10カ月の2人の里親になった。4人とも生後まもないころから育ててきた。

 「子どもたちがいたから自分も成長したし、人脈や経験が生まれた」

 森永さんはそう話す。

 ただ、不安になることもあった。本当の親でないことの告知のことだ。

 森永さんは、社会福祉団体の助言もあり、長男と次男に幼稚園児のころに伝えた。自然に受け入れてほしかったし、隠す必要もないと考えたからだ。だが長男はしばらく生い立ちを友だちに話したがらなかった。

 小2のとき、授業で一人ひとりが親から出産時のことなどを聞いて語ることになった。「知られたくない」。長男はそう言って、養子だと語ることを渋ったという。事情を聴いた担任が、語り方を工夫して、その場は収めた。

 森永さんは「実の親に育てられなかったことを、本人は悲しいと思っているのかな」と感じ、深くは追及しなかった。

 だが、数年後に忘れられない出来事がおきた。

 小5だった長男が友だちを家に連れてきた。その子は新たに里子になった男児を見て、「だれ?」と聞いた。次男が「もらってん」と伝えると、その子は「かわいそうや」と繰り返した。すると、長男が言ったのだ。

 「僕らも、もらわれたけど、かわいそうじゃない。もらわれてこなかったら、虐待されていたかもしれない。よかったんや」

 森永さんは、うれしくなった。「そんなことを考えていたんだ」

 成長するにつれ、実の家族同然になった。兄たちは「弟」のおむつを替えたり、おふろに入れたりと、世話も買って出た。

 一方、森永さんには妊娠中に知り合う「ママ友」がいないことも悩みの一つだった。同年代の子がいるママ友ができても、彼女たちが盛り上がるのは出産時の話ばかり。自分の子育てが正しいか聞く人がおらず、不安な日々もあった。

 「こういう子育ては、すごく少数派。悩んでいる人も多いと思う」

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 実際、市内の里親は少数派だ。なり手は足りない。

 市によると、家庭での養育が難しい子は微減傾向ながら市内に約400人いる。このうち里親や「ファミリーホーム」に託されているのは59人。残りは、乳児院や児童養護施設などで共同生活を送っている。

 里親委託率は2018年度末時点で13・1%で、全国平均20・5%を下回る。10年度の6・3%に比べて2倍以上に増えたが、69都道府県・市のうち、下から8番目だ。

 「他の自治体に比べ、子どもの数に対する施設が多く、施設養育が中心であったため、里親委託が広がりにくかった」

 市の担当者はそう言う。京都では戦前から、身寄りのない子や戦災孤児を寺院などの施設が救済してきた歴史があり、いまも施設は少なくはないという。

 ただ、欧米主要国の里親委託率は5割以上ある。幼少期ほど発育に家庭的な環境での養育が必要とされ、国も16年の児童福祉法改正を受けて里親委託の推進を明確化した。

 3歳未満は24年度末までに委託率を75%以上▽3歳以上就学前は26年度末までに75%以上▽学童期以降は29年度末までに50%以上の目標を掲げ、各自治体に委託率の向上を促している。

 市も具体的な数値目標を設定し、委託率アップをめざしている。

 08年の児童福祉法改正で国が里親制度の拡充を図る中、委託率が1ケタ台と低迷していた市は、11年には社会福祉法人・積慶園に一部の業務を委託。里親と施設の子の状況を把握してマッチングにつなげ、相談支援体制も整えてきた。13年からは乳児院や児童養護施設に里親支援専門相談員を配置し、相談にのっている。

 今年9月には、里親の複数の種別の一つ、「養育里親」の愛称を「はぐくみさん」にしたと発表。市民に親しみを持ってもらい、制度への理解を高めて、なり手を増やす狙いだ。

 市の担当者は「里親とうまくマッチングしていくには、子どもの数の何倍かの里親が必要で、まだまだ足りていない」と指摘する。里親になると、本当に愛情を注いでくれるかを試すためにわざと親を困らせる「試し行動」や、実親ではないことを明かす「真実告知」などの試練が待ち受けるため、心理的な負担を和らげるための支援や相談する場所が必要だという。

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 新たな一手として市は今月1日、里親支援の拠点を作った。ゲストハウスだった2階建ての京町家を活用した施設だ。臨床心理士や専門スタッフが相談に乗り、里親同士で交流できるスペースもある。保護者が病気や出産、育児疲れなどさまざまな理由で養育が難しくなった場合、子どもを一時的に受け入れる「ショートステイ」(定員6人)機能も。これらの機能が一体となった施設は市内初だ。

 市子ども家庭支援課は「子育てに不安がある里親や親が助けを求められる環境を整え、孤立を防ぐことが、子どもの養育環境の充実につながる」と話す。

 門川大作市長は9月の記者会見で「京都には地域の子は地域で育てる文化がある。養育が必要な子を支えていきたい」と話した。

 ショートステイは、利用料が保護者の年収や子どもの年齢で異なり、1日当たり無料~2750円。中京、下京、南、伏見の各区の保護者が利用できる。運営は積慶園が担う。

 森永さんは「話を聞いてもらうだけでも気持ちが晴れる。こんな場がもっと広がってほしい」と話した。

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 〈里親制度と養子縁組〉 里親は児童福祉法の制度。子どもの養育に理解や熱意のある人に「里親」登録してもらい、肉親と暮らせない子(原則18歳未満)を育ててもらう。里親には食費などの生活費が支給され、子と肉親の法的な親子関係は継続する。5人以上を育てる場合は「ファミリーホーム」と位置づけられ、行政からの支援の仕組みも異なる。

 実親が育てられるようになるまでの間など一定期間預かる「養育里親」▽非行や障害などケアが必要な子に対応する「専門里親」▽法的に親子関係となる養子縁組を希望する「養子縁組里親」▽祖父母など扶養義務がある親族が育てる「親族里親」がある。養育里親と専門里親には手当が支給される。

 養子縁組は、民法に基づいて親子関係を成立させる制度。家庭裁判所が可否を判断する。跡取りなどを目的とする「普通養子縁組」は肉親との法的な親子関係は残る。「特別養子縁組」は養親の戸籍上の実子になる。

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