[PR]

 9月9日、米カリフォルニア州サンフランシスコの周辺の空は一日中、火星のようなオレンジ色に染まった。州内で続く、かつてない規模の山火事の煙が流れこんだためだ。それから2週間後の9月23日。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、ショッキングな命令を出した。

 「カリフォルニア州が同時多発的な危機に直面していることは明らかだ」

 こう切り出したニューサム氏は、同州内で山火事のほかに、デスバレーで54・4度の最高気温を記録したといった、今年の異常気象を列挙。前例のない気候変動に対処するには、それに見合う大胆な対策が必要だとして、こう踏み込んだ。

 「今後15年で、我々はカリフォルニア州から、内燃機関エンジン車(ガソリン車)の販売をなくす」

 2035年には、州内で販売される新車はすべて排ガスの出ない「ゼロエミッション車」にすると宣言し、その知事令に署名したのだ。

 「ゼロエミッション車」とは、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)を意味する。電動とガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッド車は、「ゼロエミッション車」とはみなされない。

 知事令の通りになれば、35年からカリフォルニア州では新車販売できるのはEVなどのゼロエミッション車に限られる。ガソリン車は35年以降も所有して使うことができ、中古車市場で売買もできるが、新車として販売できなくなる。

 自動車大国の米国においても、全米最大の約4千万人の人口を抱えるカリフォルニア州の存在感は大きい。同州の新車の登録台数は昨年も209万台に達し、全米の1割強を占めた。特に日本メーカーのシェアは同州でトップの46%に上り、昨年も100万台近くを売った。

 昨年、日本国内での新車販売は519万台で、1990年代と比べて市場が大きく縮小している。それだけに、カリフォルニア州は日本メーカーにとって重要な市場だ。だが、日本メーカーが同州で販売している車はほとんどがガソリン車やハイブリッド車だ。15年後とはいえ、これらの車種が販売できなくなる衝撃は大きい。

 カリフォルニア州の知事令は全米でも初めての取り組みだが、同州は市場の大きさもあって影響が大きく、1960年代から排ガス規制やエコカーの取り組みで全米をリードしてきた。それだけに、今後は他州でも同様の動きが広がる可能性がある。

 一方、カリフォルニア州は民主党が圧倒的に強く、共和党のトランプ政権と対立することが多い。19年には、カリフォルニア州が自動車の排ガス規制で独自の環境基準を設定する権限を政権側が取り消すと表明し、同州が提訴して法廷闘争が続いている。今回の知事令についてもトランプ政権は反発しており、何らかのアクションを起こすかもしれない。ただ、米主要メディアはニューサム氏の発表を相次いで速報で伝えており、少なくとも消費者に与えたアナウンスメント効果は大きい。

 また、今回の知事令は、欧州や中国などでEV化が急速に進む、世界の流れに沿ったものともいえる。非営利組織「クリーン輸送のための国際会議」(ICCT)のニック・ラトシー博士は「知事令は、世界中の科学者や政策決定者たちが必要だと考える方向に沿ったものだ」と語る。

 他国に目を向けると、世界最大の自動車市場である中国は、EVなどの「新エネルギー車」が新車販売に占める比率を、現在の5%から25年には25%に引き上げる目標を掲げている。英国は従来、40年にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する計画だったが、今年になって計画を5年前倒しし、禁止対象をハイブリッド車などにも広げた。ニューサム氏も「中国、インド、イスラエル、ドイツ、英国など世界の15カ国がすでにゼロエミッション車に関する目標を掲げており、世界の流れはゼロエミッション車の方向に向かっている」と語った。

「ゼロエミッション車」 出遅れ

 こうした世界の動きに比べ、日本の目標は大きく見劣りする。

 日本政府が18年に掲げた目標…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。

2種類有料会員記事会員記事の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら