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 11月1日に控える大阪都構想の住民投票。朝日新聞は行政機関がつくるパンフレットや政党、政治家が掲げる公約や発言が事実に即しているか、断定できるのかを検証する「ファクトチェック」を行います。

これをファクトチェック

《大阪市がつくった住民説明会用のパンフレット》

 大阪都構想の実現→広域機能を大阪府に一元化し、二重行政を制度的に解消。首長と議会がそれぞれ一元化され、意思決定がスピーディーに。司令塔機能が統合され、成長戦略や都市インフラ整備などの組織を整え、大阪トータルの視点で強力に推進→大阪のさらなる成長を実現

【言い過ぎ】経済成長には様々な要因

 大阪市のパンフレットは、松井一郎市長率いる大阪維新の会の主張に沿ってつくられた。「大阪のさらなる成長を実現」と断定調で記されている。都構想の実現が大阪の成長につながるというのは、これまで大阪府と大阪市が別々に描いてきた成長戦略を府が一元化して担い、効率よく対策を打てるようになるという理屈だ。

 パンフレットでは、府と市が誘致をめざすカジノを含む統合型リゾート(IR)や2025年の大阪・関西万博の実現を通じて「東西二極の一極を担う大阪」を「めざすもの」として記した。

 先行事例として維新が主張するのは観光だ。府と市は13年、共同で大阪観光局を設置。観光地の魅力発信や周遊パスの発行などを一体的に進めてきた。府の推計によると、大阪を訪れた訪日客は10年には235万人だったが19年には5倍超の1231万人。国全体では同じ時期の伸びは3・7倍で、それを上回る伸びだった。

 新型コロナウイルスの感染が広がるまで、訪日客の旺盛な消費はホテルや百貨店を始め大阪経済を潤してきた。松井市長は「府と市一体で観光局を通じて様々な仕掛けをやったから」とアピールする。

 しかし、大阪の努力だけで観光客が増えたわけではない。内閣府の「地域の経済2018」は、訪日客が増えた主な理由は入国の際に必要となるビザの要件緩和に加え、LCC(格安航空会社)の就航が増えたことをあげている。観光客が増えたのは、国と大阪双方の努力の結果といえる。

 都構想は観光だけでなく、経済全体にプラスになるとも維新は主張する。維新が発足して10年。世界的にリーマン・ショック後の景気回復局面で、国内も金融緩和による円安効果などで、輸出型企業を中心におおむね好況が続いた。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの塚田裕昭主任研究員は「大阪経済は比較的良好だったが、世界経済の好調が第一の要因」と話す。特に関西は、アジア向けの輸出や訪日客が増えたことの恩恵が大きかったと指摘する。

 経済成長率をみると、全国に比べて大阪の経済の伸びが大きかったわけでもない。10~17年度の国の名目経済成長率は平均年1・3%で、大阪府の成長率(年1・1%)を上回る。国内で生んだ付加価値の総額を示す「国内総生産」(GDP)に占める「府内総生産」の割合は、10年度の7・4%から17年度は7・3%とわずかだが下がった。

 塚田主任研究員は都構想が実現しても「行政の効率化は期待できるが、経済成長に与える影響となると限定的。企業の創意工夫がより重要」とみる。経済成長には様々な要因があり、行政の仕組みを変えるだけで、経済がよくなるとは断定できないようだ。(生田大介、久保田侑暉)