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 11月1日に控える大阪都構想の住民投票。朝日新聞は行政機関がつくるパンフレットや政党、政治家が掲げる公約や発言が事実に即しているか、断定できるのかを検証する「ファクトチェック」を行います。

これをファクトチェック

《自民党大阪府連が作成した9月5日発行のチラシ》

 住民サービスが低下する 大阪市が4特別区に分割されることで、行政コストは増大します。一つの大きな家を四つに分ければ家賃や光熱水費や生活費用が増加するのと同じ構図です。

【言い切れない】区長と区議会次第

 チラシは「自民党大阪府連が大阪市廃止に反対する理由」の最初の項目として太ゴシック体で「住民サービスが低下する」と言い切っている。しかし、大阪都構想の住民投票で賛成多数となった場合、市を廃止して四つの特別区に再編する2025年1月1日時点では、市が独自で行っている住民サービスは維持される。都構想の協定書に「特別区の設置の際は、大阪市が実施してきた特色ある住民サービスについては、その内容や水準を維持する」と明記しているためだ。

 具体的には、70歳以上の高齢者が1回50円で地下鉄やバスを利用できる「敬老パス」などを念頭に置いている。中学生対象に月額最大1万円を支給する「塾代助成」や、18歳以下の子どもの医療費の窓口負担を1カ月最大2500円に抑える「こども医療費助成」といったサービスも含む。

 一方、サービスの維持が約束されているのは特別区ができる時点だけだ。それ以降の対応について協定書は「地域の状況や住民のニーズも踏まえながら、その内容や水準を維持するよう努めるものとする」とだけ記している。特別区の運営方針は選挙で選ぶ新しい区長と区議会が決めていく。

 どういった住民サービスを行うかは特別区次第。「サービスは向上する」とも「低下する」とも言い切れるわけではないが、自民や共産党が懸念する一つは公共施設の統廃合だ。もともと市がつくった特別区の財政シミュレーションでは、屋内外プールを現在の24カ所から9カ所へ、老人福祉センターを26カ所から18カ所へ、スポーツセンターを24カ所から18カ所へ統廃合することなどによる年間で最大17億円の歳出削減を織り込んでいる。市は現在、統廃合させる方針を取り下げているが、自民は「将来の統廃合を前提にしているのは明らかだ」と主張している。

 障害福祉や保育のサービスをめぐる懸念もある。いま利用している訪問介護事業所や保育所が本人の住む特別区とは別の区になった場合、引き続き利用できるのか具体的な対応策は示されていない。市は「住民サービス維持の観点から、特別区設置の準備期間中に調整」と説明するだけで、現時点でどうなるかははっきりしない。

 自民のチラシが指摘する「行政コストの増大」はどうか。市の財政シミュレーションによると、特別区の設置コストはかかるが、赤字にはならない。市が株式を100%保有する大阪メトロからの配当なども見込めるとして、維新などは「特別区で収支不足は発生しない」と主張するが、自民党は「新型コロナウイルスの影響などで赤字になる」と反論している。特別区の財政状況を見通すのは難しく、チラシが指摘する「住民サービスが低下する」に直結するかどうかは、はっきりしない。(本多由佳)