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 この秋、高校野球で公立校の躍進が目立っている。17日から京都で始まる秋季近畿大会は出場16校のうち、乙訓(京都)、山田(大阪)、東播磨(兵庫)、長田(同)、市和歌山、和歌山東と6校が公立勢だ。昨秋は明石商(兵庫)だけ。恵まれない練習環境のなか、創意工夫を凝らして勝ち上がってきた。

拡大する写真・図版秋季大阪府大会で勝ち上がるにつれ、山田の選手たちは「速球対策」としてバットを低い位置に構えて臨んだ。写真は9番打者の富永

 「絶対に勝つぞと臨んだけれど、本当に勝ったなんて信じられない」。今月4日の大阪府大会3位決定戦。2―1で履正社に勝った山田の主将・尾崎紀昭は驚きを隠せなかった。吹田市にある「普通の公立校」は次々に強豪私学を破り、最後は昨夏の甲子園王者に逆転勝ち。大阪の公立校として1994年の市岡以来、26年ぶりに秋季近畿大会出場を決めた。

 部員31人のほとんどが地元中学の軟式野球部出身で、グラウンドは七つの部で共用。狭くて内野ノックすらできない日もあるが、「その分、割り切って練習しているから苦ではない」と尾崎は言う。新チームになってから練習メニューは選手だけで作成。休みたい時は金子恭平監督(41)に申し出て、強制的な丸刈りもやめた。

 そんな柔軟な発想が試合でも生きた。打撃も型にはまらず、相手投手に合わせてフォームを変える。準決勝、3位決定戦では速球に振り遅れないよう、ほぼ全員がグリップをベルトの位置まで低くした状態で構えた。金子監督は言う。「実力が上の相手に普通にやっていては勝てない。僕は助言をするだけで、一人ひとりが考えてできるようになった」

拡大する写真・図版山田のエース坂田は鋭く曲がるスライダーが武器。秋季大阪府大会3位決定戦の履正社戦では9回1失点で完投した

拡大する写真・図版山田の今立は右横手から110キロほどの直球と80キロ台のスライダーを投げ分ける

 今年はコロナ禍で一斉休校となり、部活ができない期間があった。その間にチーム力を高めたのが、秋の兵庫県大会で準優勝した東播磨だ。

 過去に同じ公立の加古川北を2回甲子園に導いた福村順一監督(48)は「直接指導できないこの期間に、今まで以上に深く野球を伝えることができた」と振り返る。4月上旬、副部長とともに走塁、守備、打撃の注意点をまとめた1本3分ほどの動画を作って選手に配信し、公園や空き地で実践するよう指示した。黒板を使った野球の座学も動画サイトを使って配信し、「ありとあらゆることができた。活動自粛中の過ごし方の差が秋に表れたのかもしれない」。

 1日2時間半ほどしかない普段の練習も時間を有効に使う。昼休みに打撃練習の準備をしておき、放課後は校舎からグラウンドまでのダッシュがウォーミングアップの代わり。10分後には打撃練習が始まる。32人の部員は5、6班に分かれて同時に複数のメニューをこなし、主将の原正宗は「短い時間だからこそ、1球1球に集中してやれている」と胸を張る。

拡大する写真・図版近畿大会へ向けて練習する選手たちをバックネット裏から見つめる東播磨の福村順一監督

拡大する写真・図版東播磨のグラウンド。陸上部やサッカー部などと共用のため、練習は制限される

拡大する写真・図版東播磨の練習。各班に分かれて同時にいくつものメニューをこなす。手前からバックネットに向けてテニスボールを打つ選手、ティー打撃をする選手、バント練習をする選手

 今年で創立100年。兵庫3位で70年ぶりに近畿大会出場を決めた長田は、県内屈指の進学校だ。2016年には21世紀枠で選抜大会に出場した。

 こちらも練習時間は1日2~3時間。放課後に校庭のグラウンドが自由に使えるのは内野の部分だけ。そのため内外野の連係プレーは昼休みに確認する。全体練習後に自主練習をする選手もいれば、塾に向かう選手も。「自分で考えて行動する」が信条だ。

 06年から母校を指導する永井伸哉監督(48)は今季の日程がチームの追い風になったとみる。

 夏の独自大会が例年の地方大会よりもずれ込んで8月上旬まで開催されたため、「全体的に新チーム作りが遅れた印象がある」。長田も事情は同じだが前向きにとらえた。練習は、実戦で見つかった課題を克服する時間に充てた。「県大会では相手が先にミスをしてこちらが勝てた。例年よりやりこんでいない強豪校に対して、公立校が互角に戦えた」

 チーム作りが遅れたことは、私学の甲子園常連校の監督も認める。「8、9月の練習試合で経験を積ませることができなかった。公立校には負けられないという重圧もかかる」。来春の選抜に向け、近畿の一般選考の出場枠は6校。再び、「公立旋風」は起こるか。(山口裕起、大坂尚子)

拡大する写真・図版近畿大会に向けて練習する長田の選手たち。この日は雨のため、校舎の中庭でトレーニングした=2020年10月8日、神戸市長田区、大坂尚子撮影

拡大する写真・図版近畿大会に向けて練習する長田の選手たちは雨のため、校舎の中庭でトレーニングした=2020年10月8日、神戸市長田区、大坂尚子撮影

拡大する写真・図版近畿大会に向けて練習する長田の選手たち。この日は雨のため、柔道場でバドミントンの羽根を打った=2020年10月8日、神戸市長田区、大坂尚子撮影