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 昨秋の台風19号の直撃から12日で1年となった。県内でも河川の氾濫で浸水被害が広がり、鹿沼市と足利市、栃木市で4人が犠牲になった。いまだに各地で復旧工事が続く。

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 台風19号で河川の決壊や浸水が相次いだ佐野市は今春、被災した2065世帯を対象にアンケートを実施した。半数以上の世帯は避難していなかった。一因として、市は危険が迫っても「自分は大丈夫」と情報を過小評価したり無視したりする「正常性バイアス」が働いた可能性があるとみている。

 アンケートは4、5月に罹災(りさい)証明書を発行した2065世帯に郵送で実施された。1189世帯から回答があった。秋山川の決壊で被害を受けた大橋町から345、赤坂町から191の回答が寄せられた。

 市は昨年10月12日午後4時50分に避難勧告、同午後7時半に3地区に避難指示(緊急)を出した。

 「避難しなかった(できなかった)」は56・9%に上り、「避難した(できた)」(43・1%)を大きく上回った。避難した時刻も実際に水害が広がり始めてからの世帯が55・1%を占めた。

 「避難しなかった」理由として、「2階に垂直避難ができるから」が380件、「避難する方が危険だと思った」が286件、「過去に浸水や、土砂が流れ込んだことがないから」が246件だった。

 佐野市郷土博物館の茂木克美館長によると、旧家に残る日記に記された1938年の旗川の氾濫(はんらん)以降、旧佐野市エリアに氾濫の記録はないという。市危機管理課の毛塚敏夫課長は「被災者の聞き取り調査でも80歳代の方でも記憶がないという答えが多かった」。

 市は判断を鈍らせた一因として「正常性バイアス」の可能性を指摘する。市葛生地区の秋山台雨量計が24時間で471ミリを記録したのに対し、佐野市堀米町の県安蘇庁舎は267ミリだった。「山間地に比べ、市街地の雨量は少なかったので、危機感が薄かったのかも」という見方もある。

 避難した世帯の判断のきっかけについて「自宅や周辺が浸水、土砂が入ったから」が171件、「雨量や水位の情報から不安を感じたから」が159件。避難方法は72・3%が車だった。当時は夜間の大雨で路面が冠水した状態。避難した人たちも危険と隣り合わせだった。

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 台風19号で、秋山川は菊沢川放水路が合流する付近で越水。旧国道50号に架かる大橋や崩落した中橋に近い大橋町と、3本の橋が架かる海陸橋付近の赤坂町の2カ所で河川が決壊して浸水が広がった。

 現在、決壊箇所は堤防の応急復旧作業が終了したものの、安全に対応できる流量が計画高水流量(基本となる流量)よりも少ない大橋、中橋の架け替えや、取水堰(ぜき)の改良、土砂が堆積(たいせき)したままになっていた河川敷の掘削などの改良復旧工事が完了するのは2024年の予定だ。

 このため、市危機管理課や県安足土木事務所は「市民に危険を知らせる方法を検討しなおす」「洪水情報の緊急速報メールなどプッシュ型の情報提供をする」など、きめ細かい河川の情報発信を検討している。(根岸敦生

12日の秋山川をめぐる動き

16:50 佐野市が避難勧告発令

17:40 市が災害対策本部設置

19:20ごろ 海陸橋付近で越水

19:30 佐野、植野、堀米の3地区に避難指示

19:45 葛生地区に避難指示

20:50 海陸橋付近右岸が決壊

21:05 自衛隊に出動要請

21:15 吾妻地区に避難指示

21:45ごろ 大橋付近右岸決壊

23:50ごろ 中橋崩落

12日の避難時刻

16時台まで 14・5%

17時台   15・9%

18時台   17・5%

19時台   20・3%

20時台   17・3%

21時台   6・3%

※回答総数428件

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