20代の娘が家族性高コレステロール血症で、数年前から薬で治療を受けています。一方で、毎年夏になると右足のアキレス腱(けん)が痛むことがあります。受診した整形外科では「腱鞘(けんしょう)炎」と診断されましたが、家族性高コレステロール血症と関係はあるのでしょうか。(埼玉・K)
Q どんな病気ですか。
A 家族性高コレステロール血症(FH)は、生まれつき血中のLDLコレステロール(LDL―C)の値が高くなる病気です。LDL―Cは脂質の一種で、細胞に取り込まれ、膜の成分などに使われます。余った分は肝臓で処理されますが、血中の値が高い状態が長期間続くと、血管壁にたまり、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が進めば、血管が狭くなり、血が固まった血栓が生じ、血管が詰まり、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞(こうそく)が起きやすくなります。FHでは生まれつきLDL―Cの値が高いため、若年で発症しやすく、死亡率も高いことがわかっています。
Q 原因は?
A 食べ過ぎや運動不足でもLDL―Cは増えます。しかし、FHでは、LDLを肝臓で取り込む受容体が遺伝的に欠損し、LDLの処理が十分できず、血中の値が高くなってしまいます。LDL―C値(ミリグラム毎デシリットル)は平均120です。15歳以上で180以上あり、家族にも同様に高値の人がいれば、FHの可能性が高く、医師に必ず相談してください。
Q アキレス腱が痛むことはありますか?
A FHでは、アキレス腱が厚くなることは大きな特徴です。痛みについては報告は少なく、FHとの関係ははっきりしません。足の疲労や感染といった他の要因が考えられます。
Q その他に注意点は?
A FHと診断されても、基本的に自覚症状はありません。しかし放っておけば、知らない間に全身で動脈硬化が進み、突然、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞が発症する恐れがあります。発症リスクを減らすためにLDL―Cを100未満を目標に下げることが重要です。脂質制限などの生活習慣の改善と同時にのみ薬のスタチンを使います。胎児への影響から妊娠中は控えます。薬の効果は個人差が大きく、不十分ならPCSK―9阻害薬という注射薬を使うこともあります。
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