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 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から来年3月で10年になるのを前に、パリ在住の映像作家、渡辺謙一さん(69)が新作ドキュメンタリー映画「我が友・原子力~放射能の世紀」を制作した。欧州のテレビ局でこの夏放送されたのに続き、今月、日本国内で巡回上映される。

 映画は、放射線発見から今日までの1世紀余りにわたる被曝(ひばく)の歴史を、犠牲者の目線で描く。冷戦期に米ネバダ砂漠での核実験に立ち会った元兵士や、太平洋ビキニ環礁での米国による核実験で被曝した高知県の元船員、福島原発事故後に東北沖で展開された米軍の救援活動「トモダチ作戦」に参加し、被曝したとされる兵士、同事故後に甲状腺手術を受けた人へのインタビューなどで構成されている。

 タイトルは、1950年代に「原子力の平和利用」を唱えた米アイゼンハワー政権期のディズニー映画「OUR FRIEND THE ATOM」に由来する。1954年、ビキニ環礁での米水爆実験でマグロ漁船「第五福竜丸」などが被曝したのを契機に、日本国内で反核運動が盛り上がる一方で、国会では初の原子力予算が成立した。

 渡辺さんは「広島・長崎で原爆被害を受け、憲法9条を持つ日本が原子力を導入するためには『平和利用は善、軍事利用は悪』との『核二元論』が必要だった。放射能を切り口に『原子力と核兵器は一体』とのイメージを再構成したい」と映画の狙いを語る。

 巡回上映は各地の市民団体などが主催。上映日、会場、主催団体とその連絡先は次の通り。

 17日=高知県黒潮町の「大方あかつき館」(太平洋核被災支援センター、0880・66・1763)▽18日=大阪市の「ドーンセンター」(ストップ・ザ・もんじゅ、072・843・1904、前売り券が必要)▽20日=津市の「アストホール」(原発おことわり三重の会、090・5008・4532)▽24日=青森市の「BLACK BOX」(国際NGO LaRoSeHan、070・5363・9674)▽26日=福島市の「フォーラム福島」(会場024・533・1717)など。

 渡辺さんのトークがあるほか、会場によっては原子力工学者の小出裕章さんの講演もある。劇場公開は来年春の予定。問い合わせは配給会社インプレオ(03・6407・8031)へ。(田井中雅人

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 わたなべ・けんいち 1951年生まれ。岩波映画製作所を経て、97年にパリに移住し、欧州のテレビ向けドキュメンタリーを制作。「天皇と軍隊」「ヒロシマの黒い太陽」「フクシマ後の世界」などの作品がある。