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 JR九州が16日から運行を始める観光列車「36ぷらす3」。12日に報道陣などを対象にした試乗会があり、佐賀市在住の記者も乗ってみた。

 午前10時半、福岡市の博多駅に6両編成の漆黒の車両が入ってきた。入ると、マスク越しにも伝わる木の香り。福岡県大川市の伝統工芸「大川組子(くみこ)」で装飾された障子戸や天井など、至る所に木が使われている。席はふかふか。車内は全体的に落ち着いた色合いだ。

 同51分に出発。出発してしばらくしたら、車窓からの景色は徐々に緑が多くなってきた。

 「佐賀県に入りました。がばいよかとこばい。ゆっくり楽しみんしゃい」

 佐賀弁のアナウンスが流れる。基山町出身という女性乗務員と話すと、「これまで通過されがちだった佐賀に目を向けてもらえて、うれしい」と喜んでいた。

 揺られること40分。昼食の時間だ。手渡された風呂敷包みの弁当を開けると、がめ煮やめんたいこなど、色とりどりの九州名物が小箱の中に広がっていた。どれも味が染みていて、おいしい。佐賀牛のローストビーフやコハダの刺し身など、乗車した日や席によって県産の食べ物も味わえるという。手がけたのは福岡・西中洲で日本料理店を営む長岡周吾さん(43)。「弁当を通して佐賀の食材の良さを伝えたい」と語った。

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 おもてなしも用意されている。佐賀駅を通り、鹿島市の肥前浜駅に着くと、地元のNPO法人「肥前浜宿水とまちなみの会」の人たちが出迎えてくれた。周辺は歴史的な街並みや酒蔵で有名な場所。たっぷり1時間停車するので、散策のほか、新酒の完成を知らせる「杉玉」づくりを見学できる。スギの枝を球形に束ね、まとめたものだ。

 ガイド歴約10年の池田章さん(72)は「景観を多くの人に知ってもらう機会なので、精いっぱいおもてなしをしたい」と話す。運行が始まれば、駅前で日本酒を飲み比べて、珍味やスイーツとともに買えるという。

 散策に参加し、江戸時代に郵便局の役目を担っていたとされる「継場(つぎば)」の建物について説明を受けるなどしたが、出発が迫り、名残惜しさを感じつつ戻った。

 有明海、雲仙普賢岳といった景色を左に見ながら進む。太良町産のみかん100%のジュースがあったので、買って飲んだ。午後3時38分、長崎市の長崎駅に到着。通常、特急で約2時間のところを5時間近くかけての旅だった。

 料金は1万3500円(ランチ付き)と、通常の特急に乗るより3倍ぐらいかかる。だけど、確かに佐賀の魅力が詰まった、あっと言う間の素敵な時間。そういえば、この不思議な名前の由来は「世界で36番目に大きい島とされる九州をめぐり、驚き、感動、幸せの3要素を感じてもらい、サンキューの輪を広げたい」だった。

 列車は木~月の曜日ごとに九州各県を回り、佐賀県内を通るのは月曜。記者が乗った午前中に博多駅を出て長崎駅まで行く下りと、午後に戻る上りがある。問い合わせはツアーデスク(092・686・3639)へ。(松岡大将)