「史料ネット」台風被害通じて 栃木、群馬でも発足

平賀拓史
[PR]

 洪水などで水につかった歴史的資料を救出、修復する「史料ネット」の取り組み。北関東でも昨秋の台風19号を機に活動が広がり、相互連携を含めた態勢づくりが進んでいる。

 県内初となる「とちぎ史料ネット」が発足したのは今年8月。宇都宮大の高山慶子准教授(44)が発起人代表となり、協力を呼びかけた。那須地域にも10月2日、地域の博物館の学芸員らが「那須資料ネット」を立ち上げた。

 県内で機運が高まったのは台風19号だった。昨年11月、佐野市の民家に神戸大を拠点に活動する「歴史資料ネットワーク」(神戸史料ネット)のメンバーや県内の専門家が集まった。

 民家には太平洋戦争関連の軍事郵便や写真が保管されていた。秋山川が決壊して浸水したため、住人が活動歴の長い神戸史料ネットに相談した。当時、県内に相談できるような窓口はなかった。

 救出した資料は段ボール20箱分。宇都宮大の一室に運び込んだ。神戸史料ネットの助言を受け、資料の水分をキッチンペーパーでとったり、撮影してデータ化したりしている。

 「7月の熊本豪雨の被害を目の当たりにし、一刻も早く災害に備えた仕組みが必要だと感じた」。組織としての具体的な活動内容はこれからだが、高山准教授は史料ネットの必要性を広めるため、とちぎ史料ネットの看板を掲げた。

     ◇

 「茨城史料ネット」は2011年の東日本大震災を受けて発足した。茨城大の学生が中心となった資料整理活動は250回以上になり、実績を積み上げた。

 代表の高橋修教授(56)は「史料ネットを知って入学する学生もいる。先輩が後輩にノウハウを継承する好循環ができている」。学芸員や教師となった卒業生も多い。

 群馬県でも今年7月に「ぐんま史料ネット」が立ち上がった。設立総会には学芸員や自治体の文化財担当職員ら約50人が集まった。代表の群馬県立女子大の簗瀬大輔准教授(54)は「ぬれた本を捨てないでと日ごろから呼びかけるだけでも、災害時の被害はかなり抑えられる」と期待する。

 史料ネット活動で課題なのが、災害時に動ける実動部隊の確保。栃木、群馬でも組織はできたが、ネットワークづくりはこれからだ。

 全国的に注目されているのが台風19号を機に発足した長野県の「信州資料ネット」。台風19号で寺や民家から古文書や仏像など3千点以上を救出した。活動を支えるのは約20人の市民ボランティアだ。長野市立博物館を拠点に週2回の修復活動を続けている。

 世話役の原田和彦学芸員は「募集していないのに自主的にボランティアが集まっている。本当に助かっている」。SNSの被害状況報告に応じて、市民から協力の申し出が相次いだという。「積極的に情報を発信すれば、広い協力が得られる」

 ぐんま史料ネットの簗瀬准教授は「地域の歴史を守る意義を住民に理解してもらうことが大切。講演会やイベントを通して住民の意識を醸成したい」と話していた。(平賀拓史)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【期間中何度でも15%OFF】朝日新聞モールクーポンプレゼント