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 秋が深まり、天然キノコの出回る季節になった。一部で不作が伝えられるものの旬の味覚は健在だ。ただ、北麓(ほくろく)地域では原発事故の影響から、採取の自粛が今も続いている。

 甲斐市中下条の「とみや青果店」の店頭には、約20種類が並ぶ。大手スーパーに対抗しようと、店主の大森功さん(73)が40年前から販売を始めた。

 毎朝、6人がかりで奥秩父の瑞牆山や金峰山、茅ケ岳周辺から集めてくる。温暖化や長雨の影響か、今年はやや収量が少ない。今月中旬ごろまでがピークだという。

 香りや味、歯ごたえは、栽培ものに比べて強烈で多彩だ。「コウタケ(香茸(たけ))は獣のような香りが特徴で、煮付けや天ぷらに最適。ハタケシメジは歯切れや香り、出汁(だし)に優れ、炊き込みご飯で比べたらマツタケにも負けません」「ムレオオフーセンタケはバター焼きに、ムキタケは野菜いためで」と大森さんはPRする。

 北杜市でフランス料理店を経営する鈴木新作さん(41)は、コウタケを3パック購入した。「野性味あふれる香りを揚げドーナツに生かします」

 甲府市の向山一郎さん、栄子さん夫婦(共に72)は、シモフリシメジなど3種類を買い求めた。「キノコ汁にすると香りが格別なの。土の香りっていうのかな」とうれしそう。

 値段は1パック千円前後。11月上旬ごろまで販売が続く。

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 富士北麓(ほくろく)の富士吉田市と鳴沢村、富士河口湖町の3市町村では、県が今秋も採取と出荷、摂取の自粛を呼びかけている。

 2011年の福島第一原発事故の影響で、一部の天然キノコから国の基準(1キロあたり100ベクレル)を超える放射性物質(セシウム)が、毎年検出され続けているためだ。

 県は9月28日と今月1日、富士北麓で採取した20検体(12品種)を調べた。その結果、富士吉田市のハナイグチとアミタケ、鳴沢村のショウゲンジなど5検体(4品種)から、基準値を超えるセシウム137を検出した。県林業振興課の担当者は「安定して基準値を下回る状態が続かないと、3市町村の制限は解除できない」と話す。

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 天然キノコの放射性物質を検査する県森林総合研究所によると、測定するのはセシウムとヨウ素。そのうち、セシウム137は放射能が自然に半分になる「半減期」が約30年と長く、放出量も多かった。

 戸沢一宏・研究管理幹は「事故から9年半たち、森林に降り注いだセシウム137は約2割しか減っていない。ショウゲンジなど特定のキノコが地表に残るセシウム137を吸収し、基準値超えの検出が続いている」と話す。(河合博司)