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 広島大学の大学院生2人が南アジアのスリランカで、民族や宗教の違いを超えた人々の融和を支援する活動に乗り出した。内戦終結から約10年。主戦場だった同国北部で、薬などに使える植物の栽培を通じて住民が協働する場を提供し、平和な社会づくりへの貢献をめざす試みだ。

 2人は、いずれも博士課程で、石川県七尾市出身の内田涼さん(27)=広島県東広島市=と、梶下佳成さん(33)=同県呉市。

 内田さんは紛争解決学や平和構築について学ぶ。2017年春に休学し、スリランカのコロンボ大学に1年間留学した。首都から車で6~7時間の北部・ワウニヤ県に住み込んでフィールドワークに取り組んだ。民族間の溝が埋まらず、開発から取り残された状況を目の当たりにして、地域の発展や産業創出を図る活動の立ち上げを決意した。

 同国に研究所がある化粧品メーカー「アルビオン」(東京都)に連絡を取り、資金支援や栽培時の協力を得られることになった。同社担当者は「企業が思いもつかない、発想や取り組み。学ぶこともたくさんある」と評価する。

 社会人の時にマレーシアで食品工場設立の経験がある梶下さんに声をかけて、タッグを組むことにした。新型コロナウイルスの影響もあり、昨年秋から現地入り出来ていないが、オンラインで打ち合わせを重ねて今年6月、留学時代に知り合った現地の元官僚らと、現地政府承認のNPO団体「マザーランドランカ」(https://motherlandlanka.org/別ウインドウで開きます)を設立した。住民たちが同国に自生する8種類の植物を栽培し、アルビオンが化粧品開発に活用するというプロジェクトを進める。

 対象は、民族や宗教が異なる人たちを含むワウニヤ県の30家族。内田さんは「ほかの民族のアイデンティティーを尊重しながら、ともに働くことで、和解や相互理解が進むのではないか」と話す。活動の効果も研究していくという。今月中旬以降、苗の植え付けを現地で始める計画だ。

 内田さんは、この活動のテーマの一つに「持続性」をあげる。内戦後、多くの国際協力NGOが引きあげる様子を見てきたからだ。将来的に国際機関などとの連携も視野に入れる。梶下さんも「現地の人が自主的に回していくような活動になれば」と期待を込める。(北村浩貴)

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 〈スリランカ民主社会主義共和国〉 シンハラ人やタミル人など多民族からなる人口約2千万人の国家。仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教といった宗教が同居する。分離独立を目指す少数派タミル人の反政府武装勢力と政府の間で1983年ごろから内戦が続き、2009年に終結した。紛争終結後も北部や東部などで開発が遅れている地域があるという。

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