拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

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 ネットで調べ物をしているうちに、ついつい関係のないニュースばかり読んでいた。こんな経験、ありませんか? 今回のコラムはそんなあなたにぴったりです。対策には、集中力を上げるのではなく、集中を邪魔するものを減らす発想が大切のようです。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

気付いたらネットサーフィン

 引き続き、制限時間内に仕事を終わらせる方法についてご紹介します。今回は「④注意散漫タイプ」について、詳しくお話しします。

 仕事で必要な情報を探すためにネットで検索をしていたら、いつのまにか関係のない記事をネットサーフィンしてしまうなど、仕事以外のことに脱線してしまうタイプです。

 このタイプには、集中力が途切れないような環境調整が最も有効です。集中し続けることそのものをがんばるというよりは、集中を邪魔する刺激を極力減らすという発想です。

 「ネットサーフィンがしたい」という欲求にかられることは仕方のないことですが、その時に、すぐにネットができてしまう環境になっていることが問題なのです。

 たとえば、SNSについついアクセスしてしまう人のパソコンには、そのページがブックマークされていることが多いでしょう。私もその一人でしたが、ブックマークを思い切って消してみました。わざわざSNSを検索してたどり着かなければ閲覧できないのです。このちょっと手間のかかる環境が、注意の途切れるのをずいぶん引き留めてくれます。

こんな状態なら末期

 しかし、同室に誰もいないところで仕事をしている知り合いは、「私は一定時間ネットができないようにするソフトまで購入して徹底的に仕事に集中しようとしたのに、ある時、自分でそのソフトを解除してしまった。もう本当にやばいところまできている」と青ざめていました。

 わかっていてもやめられない状態に至っている方は、実は多くいらっしゃると思います。ネットでなくてもスマホではいかがですか? 20年前にはなかった道具なのに、今や片時も手放せない人も多いですね。もうその段階までいけば、逆にご褒美として利用するのも手です。やりたくない仕事をしている時に限って、どうしてもネットサーフィンをしたくなるものです。

 そうした場合には、「この仕事があと1ページ終わったら」などキリの良いところでご褒美として活用するのはいかがでしょう。

 この話をすると、別の知り合いにこう言われました。

 「でも、結局今すぐネットサーフィンできるわけでしょう? わざわざご褒美にしなくても」と。あ、そうなんです。当然そうなんです。

 でもここで想像力を使います。私自身もプライベートでよくやるのですが、「この仕事が終わらないまま、“あー、やらなくちゃいけないのに、なにしてんだろ、自分”ってモヤモヤして、結局自己嫌悪に陥るパターン。一方で、“あーーー!仕事終わった、すっきりしたーーー!”って心置き無くネットサーフィンするパターン。どちらを選ぼうかな」

 どちらも選べる状況にいて、決断できるといいですよね。慣れないうちはかなり、ストレスがかかりますが、一度「仕事終えたあとのすっきりした気分」を体感してご褒美を享受できると、病みつきです。正直ご褒美そのものより、終えた達成感とすっきり感の方がご褒美です。

「あと5分」は実は有効

 とはいえ、そんなこと頭では誰だってわかっているよという声が聞こえてきそうです。仕事を全部やり終えるまで集中力が持たないからつらいのですよね。

 「この仕事があと1ページ終わったら」などキリの良いところでご褒美として活用という、この部分が重要です。ここをもっともっと時間的に短く設定するのです。

 「あと5分だけやったら、ネットできる」というかんじです。5分で終わりそうな仕事に分解するといいでしょう。その時間内にやり遂げた満足感を得られます。

 実はこの手法、ADHDの治療にも用いられる、「注意持続訓練」です。

 もう少しわかりやすく手順をご紹介しますと次のようになります。

 あらかじめメモ帳を用意して手元に置いて、集中できる時間(たとえば5分間)に完遂できそうな課題を用意します。そして5分間のアラームを設定して課題をスタートさせます。課題の最中に「あ、ネットしたい」という考えが起こったら、すぐにネットをする代わりに、メモ帳に「ネット」と書き出します。こうしてわざわざ書き出すことで、「よし、ここに書いたから大丈夫」と思えたり、視覚化してみると距離が取れて「なんでわざわざこんなことを今したがるんだ、自分」と笑えてきたりします。

 書き出したら、また課題に集中し、アラームが鳴るまでこれを続けます。課題が終了したら、メモに書き出したことを実行します(ご褒美)。でもメモに書いたことって、やりたくない課題からの現実逃避の言い訳であったりするんですよね。課題が終われば、どうでもいいことだったりします。試験勉強前に限って部屋の掃除をしてしまう・・・あれです。

 ぜひお試しください。

 ◇「コラムの筆者が作成したADHDタイプの大人のための時間管理グループレッスン」がオンラインで受講できるようになりました。詳細はこちらから。(http://kanameclinic.sakura.ne.jp/sblo_files/kanameclinic/image/E69982E99693E7AEA1E79086E382B0E383ABE383BCE38397E381AEE38194E6A188E58685EFBC88E38396E383ADE382B0EFBC89.pdf別ウインドウで開きます

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。