ダウン症の長男と暮らして幸せ再発見

小浦雅和
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 障害があって話ができないダウン症の長男との生活での気づきをブログで発信している福岡市東区の人材育成コンサルタント業、田中伸一さん(50)が17日、福岡県豊前市で講演する。長男と暮らす中で「生きる意味を考え、喜びに満ちた人生を送れるようになった」と話す。

 田中さんは嘉麻市出身で大学を卒業後、福岡銀行の行員だった1993年に23歳で結婚した。翌年に長女、96年に長男彰悟さん(24)が生まれた。彰悟さんはダウン症とわかった。

 彰悟さんは生後2カ月で、肺炎とともに気管が閉じて呼吸ができなくなり手術を重ねた。現在も気管を切開し、カニューレと呼ばれる管を使って呼吸している。重い知的障害もあって話ができない。2時間ごとに必要なたんの吸い出しも自分ではできず、家族がずっと世話をしている。

 99年、彰悟さんが治療を受ける病院や特別支援学校へ通いやすい場所に家を建てた。2002年には転勤のない通販会社に転職し、管理職を務めた後の08年に独立、今の仕事を始めた。

 友達を作り、恋愛や結婚はできるのだろうか――。彰悟さんが生まれた後、絶望的になったという田中さんだが、呼吸ができず生命の危機が訪れると「とにかく生きてほしい」との思いが強まった。検査や手術などの対応に追われ、ふさぎ込んでいる余裕はなくなっていったという。

 一方で彰悟さんがいたことで、銀行員で終わったかもしれない人生が変わり、人材育成のプロとして独立できた。「自分らしく。今を楽しむ」。そんな価値観が高まった。

 彰悟さんを支える様子などをネットで発信するうち、経験や気持ちの移り変わりを多くの人に伝えたいと考えるようになり、昨年4月にSNSなどを通じて講演会の主催者を募った。この年の6月に大阪市で話すと、県内を中心に評判が口コミで広がり、講演依頼が来るようになった。

 新型コロナウイルスの影響で今年2月以降は途絶えていたが、7月に篠栗町で再開した。10回目となる今回の豊前市は、彰悟さんが生まれた時に住んでいた場所だった。

 田中さんは「かわいそうと思われる状況でも乗り越えられる。幸せを感じる能力を高めることで、人生は好転させられることを語っていきたい」と話す。

 講演会「愛すること、学ぶこと、生きること」は17日午後1時半から、豊前市吉木の市総合福祉センターで。無料。問い合わせは豊前市人権センター(0979・82・1111)へ。(小浦雅和)

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