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 収穫の時期を迎えている奈良県内各地の水田で、害虫の「トビイロウンカ」が大量に発生し、イネが円形状にまとまって枯れる「坪枯れ」の被害が拡大している。県の担当者が「昭和の大量発生以来、最悪の被害」とする深刻さに、農家が頭を悩ませている。

 「子どもの頃から見ているけど、こんなのは初めてだ」。今月中旬、御所市の水田で収穫作業をしていた藤井義和さん(77)は、目の前に広がる多くの坪枯れの跡を見てそうつぶやいた。9月中旬に枯れ始め、10月初旬までに一気に広がっていったという。「防ぎようがない。収穫量は例年より2~3割は減るだろう」

 県病害虫防除所によると、トビイロウンカは体長3~5ミリほどで、毎年夏に中国やベトナムから風に乗って飛来する。イネの株元に寄生し、茎に管を突き刺して水分を吸い取るため、坪枯れが起きる。田原本、広陵、三宅の各町など中和地域の平野部で被害が目立つという。

 被害が急速に広がったのは9月に入ってからだ。防除所は今年、例年より1カ月ほど早い6月下旬にトビイロウンカの飛来を確認。7月下旬の巡回調査では県内の田んぼにおける発生率は5・9%だったが、9月中旬には奈良盆地の平坦(へいたん)部での発生率が22%に拡大。10月上旬は同52・9%だった。水田全体が枯れてしまう「反(たん)枯れ」状態の場所も確認されているという。

 防除所は7月末と9月中旬に注意報を2度発表し、早めの収穫を呼びかけていた。広陵町や田原本町に水田を持つ中井好(よしみ)さん(43)も、被害が出た場所は1週間程度収穫を早めたが、その分コメが実りきっておらず、小ぶりになってしまった。収穫量は例年の3分の2程度になる見込みだ。

 「愛情かけて作ってきたお米を、楽しみにしていた方々に届けられないのが何よりつらいです」と中井さん。周囲にはトビイロウンカの被害に落胆し、農家をやめると決めた人もいるという。別の農家の70代男性は「正直、注意報はほとんど見られていない。行政やJAには被害が広がる前に、現場の農家にまで伝える努力をしてほしかった」と注文をつける。

 今回の被害について、防除所の吉村昭信所長は、飛来源のベトナム北部や中国南部での大量発生が一番の要因とみており、「県内では1966年の大量発生以来最悪の被害とみられる」と話す。農林水産省近畿農政局は9月30日、県内のコメの作柄予測を「平年並み」(9月15日時点)と発表。担当者は「9月時点では現在ほど被害が拡大していなかった。今月末に出る今月15日時点の予測では、被害状況が反映される可能性がある」としている。(根本晃)