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 都内の商店街などで、路上にテラス席を設置する例が増えている。コロナ禍で苦境が続く飲食店を支援するため、行政が道路利用の制限を緩めているためだ。にぎわいを取り戻し、新しい街の形をつくるきっかけになるのか。

 JR三鷹駅(東京都三鷹市)南口の中央通り沿いにある居酒屋「分福」では13日夕、軒先の歩道に設けたテーブルで客がビールジョッキを傾けていた。会社員の女性(45)は「開放感があっておいしいし、隣の席の人に気がねせず、安心して食べられる」。

 この周辺ではレストランや串焼き店、ラーメン店など8店舗が市や商店会の呼びかけに応じ、客の入りなどに応じてテラス席を設ける。テラスとストリートを組み合わせて「三鷹テラストリート」と名付け、9月に始めた。

 可能にしたのは、6月に国土交通省が始めた道路占用基準の緩和だ。「3密」を避けて飲食を楽しめる形を広げて飲食店を盛り上げるための緊急措置で、商店会などの団体が申請すれば、一定の条件下で道路を利用でき、占用料も免除される。都や区市も、管理する道路でこれに準じた対応をしている。国の緩和期間は11月末までだが、延長も検討しているという。

 飲み屋が密集するJR神田駅(千代田区)周辺では、5団体が区道でのテラス営業を始めている。今月に店の軒先の路上にテーブルを設置した立ち飲み屋「あかしや」の岩佐保さん(85)は「風が気持ちいい今の時期は好んで使ってくれる人も多い。テラス営業で暗い雰囲気を壊したい」。近くの鉄板焼き店「でくのぼう」の店主・迫敬毅さん(48)も「厳しい状況は続いている。浸透には時間がかかるかもしれないが、まずは通りのにぎわいを見せることが大切だ」と期待をかける。

 一風変わった方式をとるのは、上野公園(台東区)そばの仲町通り。14日に街灯に着脱式のテーブルを合計20台設置し、「ガイトウスタンド」と名付けた。テーブルにはテイクアウト利用ができる通りの店の紹介カードが。仕掛け人の1人で池之端仲町商店会の道明葵一郎会長(42)は「いろんな店の商品を楽しめる。飲み屋街の新しいスタイルとして、気軽に利用してもらいたい」と呼びかける。

 行政も後押しする。都は8月、テラス営業に取り組む飲食店が使う椅子やパラソルの購入経費に、上限10万円を支援する制度を始めた。三鷹市も同月、必要な申請手続きのサポートのため、市にワンストップ相談窓口を設けた。生活経済課の主事若島慎兵さん(33)は「通り過ぎるだけだった路上で食べたり本を読んだりする人たちが街にお金を落とし、循環が生まれ、新しい街の魅力になる」と話す。

 ただ、課題も残る。交通空間の確保のために、テラス席の範囲が軒先1メートル以内に限られるケースが多いうえ、各保健所は客同士が2メートル離れるレイアウトを求めている。豊島区では複数の商店街が、道幅の狭さからテラス営業を断念したという。

 さらに許可範囲以上に道路に出ないか確認するパトロールを警察から求められ、人手もかかる。10月から始めた神田駅前商店会の中山誠之助会長は「手続きの煩雑さも含め、まだハードルが高くて参加したい店は限られる。もっと気軽にできる仕組みにしてほしい」と話す。(平山亜理、大山稜)

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