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 高知県産ユズの一大輸出先シンガポールで、県が有名料理店や現地メディアなどに向けた売り込みを強化している。日本の食材の人気が高い同国で、ユズ以外の食材や「高知」の名前を積極的にアピールし、ブランド化につなげていく狙いだ。

 「ユズは白みそと合わせて、甘くなりすぎないよう塩味を出しました」――。

 7日、シンガポール中心部のレストランでは、パティシエのジャニス・ウォンさん(37)が、現地メディアの記者らに高知のかんきつ類を使ったオリジナルのデザートやチョコレートを紹介していた。県が開いたメディア向けの試食会だ。

 ジャニスさんはアジア1のパティシエに選ばれたこともある現地の人気料理家。日本の食材も積極的に採用しており、東京に出店していたこともある。この10年ほど高知のユズを料理に使っており、これまでに高知を4度訪れ、農家なども訪ねてきたという。

 「この10年で、ユズはシンガポールでも誰もが知っている食材になり、いまは品質が問われている。その点で高知のものはいい。ベルガモットなども、すばらしいと感じています」

 この日の試食会では高知のかんきつを使った料理やカクテルが振る舞われた。会場は、ミシュランガイドで一つ星を獲得して注目されているシェフの経営するレストラン。参加した女性記者のひとりは「高知の名前は知らなかったが、いい食材があると印象に残った」と振り返った。

 県によると、2019年の食品輸出額は約14億5800万円で、前年比プラス0・4%。ここ数年、輸出を伸ばしてきたユズも約3億7200万円で、前年比プラス5・0%。18年は20%増だったことに比べると、伸びは鈍った。

 シンガポール向けの輸出額は約2億5700万円と全体の2位。前年より2・8%減り、米国に及ばなかった。

 背景には、日本の他の産地や韓国など外国との競争激化がある。ユズが世界的に注目されるようになったことで、逆にライバルが増えた格好だ。

 シンガポールでも、ジャニスさんら有名料理家や現地大手飲料メーカーとの取引も広がってきたが、競争は厳しくなっている。さらに新型コロナウイルス流行の影響で航空運賃が値上がりしており、輸出業者には厳しい状況だ。

 県シンガポール事務所の浅井孝則副所長(39)は「ユズの品質の高さに加えて、ブンタンやコナツといった別の食材を伝えていくことも大事になってきている」と説明。「コロナの影響はいつか落ち着く。そのときに輸出を伸ばすためにも、今のうちに『高知』の名前そのものをさらにアピールしたい」と話した。(シンガポール=西村宏治)

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