[PR]

 2019年12月のある朝、宮崎県国富町の井園(いぞの)安男(やすお)さん(80)は、運転していた車を急いで路肩に止めた。「また始まった」。井園さんは体を冷やすと、右手にある異変がよく起きた。

拡大する写真・図版新潟県と群馬県を結ぶ新清水トンネル建設現場。作業員が手にしているのが削岩機=1965年

 人さし指と中指の先が、みるみると血の気を失って白くなり、触感を失う。数分すれば青黒くなって血色が戻るが、ジリジリとしびれる不快な痛みが10分ほど続く。

 井園さんが最初にこの症状に気づいたのは1990年ごろ、50代に入ったときだ。長年、故郷を離れてトンネルなどの工事現場に臨む「坑夫」として身を立て、当時は神奈川県内の山林をチェーンソーで伐採する日々を送っていた。

 仕事仲間の男性がある日、「寒くなると白蠟(はくろう)が出るんだ」と手のひらを見せた。人さし指から小指の根元まで、ろうそくの蠟のように白かった。男性は、「白蠟」が現れるたび、指を自身の体や工具に打ち付け、痛みを紛らわせた。

拡大する写真・図版指先が白くなった井園安男さんの右手=井園さん提供

 「そういえば自分も」。井園さんも時折、急に指先が白くなることがあった。だが、月日がたつごとに痛みは増し、雨で体が冷えきった日は特にこたえた。白くなった指をわきの下やズボンに入れ、温める。20~30分ほどで消える苦痛だが、耐えるだけで1日の気力をそがれるように感じた。

 それだけでなく、普段から手のしびれ、こわばり、冷えが強まった。なぜだろう。周りの仲間も「おれもしびれる」「手は痛いよな」と口にはするが、「現場でこれだけの作業をしているんだから」と気にとめてはいなかった。

 井園さんが最後に働いたのは、3年後に全線開業を控えた都営大江戸線の工事だった。97年、東京ドームに近い東京都文京区・春日通りの地下で、春日駅をつくるために地面を掘り下げていた。

 地中に何本も鋼(はがね)の杭…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。

2種類有料会員記事会員記事の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら