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 「足利で水害というと渡良瀬川本流、というイメージが強かった」。足利市の和泉聡市長は、そう振り返る。死者も出た昨秋の台風19号では、市東部の旗川、出流川、尾名川の流域で、特に被害が大きかった。栃木市でも、巴波(うずま)川の支流の永野川が決壊し、広い範囲に被害が出た。

 これらの川は、渡良瀬川に流れ込む支流。国が管理する渡良瀬川本流区間とは異なり、県管理の区間が大半を占める。

 国や県によると、利根川は、「200年に1度」の豪雨にも耐えられるダム、堤防、遊水地を備えている。利根川の支流でもある渡良瀬川は、「100年に1度」を想定した造りで支えられている。しかし、その支流となると、「50年に1度」を想定した造りになっている。

 戦後間もなく、1947年のカスリーン台風や49年のキティ台風の被害が相次いだ頃、県では治水対策を急いだ。その頃の高水基準が残っている川もある。

 当時の地形図で確認すると、昨秋の台風で浸水した地域の多くは、周囲よりやや高い場所に街道があり、自然にできた高み(自然堤防)の上に集落がある程度で、ほとんどが田や桑畑。もともと、ある程度は水に漬かるかもしれない地域だったことがうかがえる。しかし、高度経済成長期を経て工業団地が造成されたり、住宅が増えたりした。

 利根川の治水は国の「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画」で決められている。渡良瀬川水系は、大雨の時には渡良瀬遊水地や草木ダムを生かし、利根川に流れ込まないようにしていて、さらにその支流で大量の雨水をどうさばくかが問われている。

 県県土整備部の田城均・次長は「本流と支流は、親亀と子亀、孫亀の関係のようなもの」と話す。利根川が親亀なら、渡良瀬川は子亀、昨秋の台風で被害が出た旗川、秋山川、巴波川、思川は孫亀に当たる。

 県は、佐野市の秋山川と栃木市の永野川で、決壊した堤防の改良復旧工事に取り組んでいる。秋山川は約3キロ区間で、永野川は約12キロ区間。堤防を復旧し、河積(川の横断面で水の占める面積)の小さい橋や堰(せき)を改修する。全体事業費は秋山川が約57億円、永野川が約192億円に上る。

 「近年の天候を考えると、従来のように『命を守るために早めの避難を』とだけ言っているわけにはいかない」と田城次長。大規模な改修工事の理由と、決壊が起きないような対策の必要性を語る。

 今年度から始めた「堤防強化プロジェクト」は、向こう9年間で県内約900カ所を対象とし、堤防全体をコンクリートなどで覆う「巻堤」や、掘削した土砂を使って堤防の幅を広げる「腹付け」をする。たとえ水が堤防を越えてあふれたとしても、決壊は防ぎ、避難の時間をかせごう――という方針だ。

 渡良瀬川に流せる水量は国の計画で、思川が毎秒3700立方メートル、巴波川が毎秒1200立方メートル、秋山川が毎秒500立方メートル、旗川が毎秒900立方メートルと、上限が定められている。

 これに対応するため、県は管理する支流に遊水地や調整池を作ることを検討している。調整池は用地取得だけではなく、平時は農地などとして所有者が利用し、洪水発生時のみ調整池として使う「地役権」を設定する策も視野に入れている。「被害軽減を第一に考えたい」と田城次長は話す。

 熊本県などの水害で広く知られるようになった「線状降水帯」について、佐野市や栃木市の担当者は「今まで(地元に)かからなかったのは幸運だったというしかない」と話す。佐野市や足利市は今年、市内の商業施設と協定を結び、洪水時に、車での避難先として屋上や立体式の駐車場を使えるようにした。(根岸敦生

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