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 映画「浅田家!」が全国東宝系で公開されている。津市出身の写真家・浅田政志さん(41)の実話をもとに、家族を巻き込んだ写真集づくり、東日本大震災で泥だらけになった写真を洗うボランティアなど、「家族と写真」を軸に物語が描かれている。「家族写真は生涯のテーマ」。そう考える浅田さんがロケ地になった地元・津市への思い、さらにはスクリーンの前で感じてほしいことを語った。

 津(つぅ)の良さを説明するのは難しいですね。

 京都のような観光名所があるわけではない。北海道のような雄大な自然があるわけでもない。大阪のように面白い気質の人がいっぱいいるわけでもない。ご飯系は自慢できるものが、そこそこありますけど、このインタビューは、食べ物をアピールする場じゃないですしね。まあ、日本一短い地名には、僕はプライドを持っていますけど。

 言葉にしちゃうと平凡になっちゃうんですけど、ふるさとの良さは、やっぱり生まれ育った場所という特別さですよね。

 10代のころは、津は田舎だなあ、都会に出たいなあと思っていました。

 でも実際に離れてみて、遊んでいた場所やよく通った道、津ヨットハーバーから見る海。そういった、いつもあった場所に戻ってくると、昔、こんなことがあったなあなんて、なんでもない日常を思い出しちゃって。特に30歳を過ぎたころから、そういうことを感じるようになりました。

 映画でもそういった津の日常的な街並みが出てきます。だから全国の人もそうだけど、僕は津市民の方にこそ見てほしいな。いつも見ている津の風景なのに、5倍くらい新鮮に見えると思いますよ。

 僕が一番好きなのは、津新町駅で家族と別れるシーン。津新町駅は津から離れるとき、いつも家族が見送ってくれた駅。僕にとってふるさとや家族との境界なんです。

 家族もきっとふるさとと同じなんでしょうね。

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 僕は写真集「浅田家」の出版をきっかけに、写真家として世に出ました。父、母、兄、自分の4人家族を被写体に、「家族がなりたかったもの」「家族でやってみたいこと」をテーマにコスプレしたり、あちこち行ったり。家族が協力して撮影した写真集です。これは写真の専門学校で「たった一枚で自分を表現せよ」という課題を考えたことが始まりでした。

 家にいればおかんに小言を毎日言われ、面倒くさいなあって思ってたことも、一人暮らしをしてみると、そのありがたみがわかりますよね。ふるさとも、家族も、たとえそのときは何の魅力もないと思っていたとしても、誰にとっても特別なものであることには違いないんです。

 じゃあ、ふるさとと家族の何が一緒なんだろうと思ったときに、選べないってことなんですよね。

 ふるさとも、家族も、誰にとっても選べないのは一緒。だからこそ、それがその人にとって特別なもの、揺るぎないものになるんじゃないかなと。改めて言葉にしちゃうと、当たり前のことなんですが、最近、そう思うようになりました。

 映画では津や家族のほかに、東日本大震災の被災地も出てきます。

 僕の実家は阿漕浦(あこぎうら)海岸の近くなので、海が大好きですが、被災地に行ってからは、この海沿いの風景が一瞬にしてなくなる津波の恐ろしさとともに、日常の貴さを感じるようになりました。

 来年で震災から10年。10年たって震災の記憶が風化したかどうかはわかりませんが、映画を見て震災の被害を知って、日常の貴さを改めて感じる人が増えたらいいなと思います。

 家族や写真って、いまほとんどの日本人にとって、そばにあるものじゃないですか。映画では浅田家という、ちょっとふざけた家族を見るわけですが、その浅田家を通じて、自分の家族についても何か感じてもらえたら。

 例えば、今度こんな家族写真を撮ってみたいとか、帰ったらアルバムを開いてみようかなとか。映画を見て、家族や写真を顧みるような行動につながれば、僕にとって一番の喜びです。(聞き手・佐々木洋輔)

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 映画「浅田家!」 浅田政志さんの写真集「浅田家」と、東日本大震災で汚れた写真を持ち主に返す活動をする人々を撮影した写真集「アルバムのチカラ」の2冊を原案に制作。主演で政志さん役の二宮和也さんのほかに、兄を妻夫木聡さん、母を風吹ジュンさん、父を平田満さんがそれぞれ演じる。幼なじみ役で黒木華さん、被災地で写真を洗う青年役で菅田将暉さんも出演。監督は、2016年公開の「湯を沸かすほどの熱い愛」で注目を集めた中野量太さん。

 〈あさだ・まさし〉 1979年、津市生まれ。日本写真映像専門学校研究科卒。スタジオ勤務を経て2007年に写真家として独立。09年、写真集「浅田家」が写真界の芥川賞といわれる第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。ふだんは東京を活動拠点としているが、妻、長男は津市内に在住し、本人も津市民。「単身赴任のような働き方」をしている。

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