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 鉛筆による緻密(ちみつ)な線描で知られる金沢美術工芸大学名誉客員教授で画家の木下晋さん(73)が、個展「いのちを刻む」を福井市松本1丁目の画廊サライで開いている。難病の妻君子さん(71)をモデルにした大作「仰臥人(ぎょうがじん)」など計17点を展示している。31日まで。

 木下さんは富山市出身。子どものころの極貧生活や母の放浪癖、父の事故死、高校中退など数奇な人生をたどってきた。それ故か、絵の題材は盲目の芸能者「越後瞽女(ごぜ)」の最後の継承者とされる故小林ハルさん、ハンセン病の元患者で詩人だった故桜井哲夫さんら濃密な人生を歩んだ人の肖像画が多い。

 展示品は、50年前に駆け落ちで結婚し、パーキンソン病で闘病中の君子さんをモデルにした作品が8点を占める。縦1・25メートル、横2メートルの「仰臥人」は君子さんの濃い瞳を10B、うっすらした鼻先は10Hと複数の鉛筆を使い分けて濃淡を出し、約4カ月がかりで仕上げた。

 「人間が壊れていっても命は死ぬ瞬間まで続く。女房も年々悪くなるが、最期までどうあるべき、どう生きるべきかを見届けたい」と木下さん。

 50代後半で発症した君子さんの正確な病名がわかったのは5年前。脳の疾患を抑えるため、介護では3時間ごとの投薬が欠かせない。妻が伏せたベッドの傍らに寄り添って制作を続ける木下さんは「昔からモデルにし、肉親以上の存在になった自分の女房だからできること」と話す。

 福井での個展は2010年以降、2年ごとに催している。「淡々と開いてきたつもりでも、福井にも友人ができ、自分の居場所を見つけた感じがする」という。問い合わせはサライ(0776・27・1204)。(中田和宏)

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