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 映画「浅田家!」が全国で上映されている。後半は主人公の写真家・浅田政志さん(41)が東日本大震災の被災地で写真返却に取り組むシーンが続く。浅田さんが岩手県野田村で関わったボランティア活動を元に描かれた。活動は「最後の1枚まで」と引き継がれ、今も続いている。

 野田村で、津波で流された写真の返却活動が始まったのは、2011年3月20日ごろだった。当時は千葉大学の大学院生で、今は千葉県の中学校に勤める小田洋介さん(35)が村役場前で友人と始めた。

 野田村にあった小田さんの実家も1階が津波で流された。帰郷して偶然、知人の写真を見つけて届けると「この1枚しかないんだ」と喜ばれ、被災者にとっての写真の大切さを知った。自衛隊や警察、消防がまとめておいたアルバムを、小田さんらが回収、洗って乾かし、見つけられるよう展示した。95歳のおじいさんは両親の写真を見つけると目に涙を浮かべ、何か思い出の曲を歌い出した。

 震災から1カ月余りたった時、「私にもやらせてください」と声をかけてきたのが浅田さんだった。「これだけ多くの写真が流され、ここに映っている人たちはどうしているのかと思った。何げない日常の写真だけれど、その日常の尊さを感じた」と振り返る。

 映画の中で、父親が遺影にするため、娘の写真を捜しに来る場面がある。卒業アルバムの中に見つけ、「小さいなあ」と涙ぐむ。浅田さんは「そういう場面を見たわけではないけれど、そういうことはあったんだろうと思う。写真の力を感じる」と話す。

 浅田さんは東京から足を運んで活動を続けた後、被災地の写真洗浄と返却の取り組みを撮り始め、昨年は西日本豪雨で被害に遭った岡山県倉敷市真備(まび)町で写真洗浄の活動を撮影。一連の写真を「アルバムのチカラ 増補版」(赤々舎)にまとめ、9月に出版した。

 野田村の写真洗浄の活動は被災地支援ネットワーク「チーム北リアス」の写真班が引き継いだ。今は年に3~4回、公共施設で返却会を兼ねたお茶会を開いている。再生した約8万枚の写真のうち、6万枚余りは関係者の元に戻った。14年から活動に参加する大阪府の宮前良平さん(28)は「今でも毎回数人は訪れる。写真を捜したいと思うタイミングは人それぞれ。最後の1枚まで返していきたい」と話した。(大久保泰)

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 陸前高田市を拠点に活動を続ける「被災写真救済ネットワーク」は、津波や水害で被災した写真の洗浄技術を伝える動画を公開している。富士フイルムなどと連携して制作。これまでの活動を通じて培った写真の乾かし方や泥の拭き方を紹介している。ネットワークの秋山真理共同代表は「被災者にとって写真は大切な思い出。濡れた写真も救済できることを知ってほしい」と話す。

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 〈「浅田家!」〉 全国東宝系で公開中。ユニークな家族写真集「浅田家」で写真界の芥川賞とも言われる木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志さんを嵐の二宮和也さんが、小田さんをモデルにした大学院生を俳優の菅田将暉さんが演じている。

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