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 まだ「認知症」の言葉がなかった1980年、「呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会」として京都で誕生し、全国組織になった「認知症の人と家族の会」(本部・京都市上京区)が40周年を迎えた。節目の年に、患者や家族、支援者の経験と知恵を介護の悩みに役立てる一冊を出版した。

 「認知症 介護の悩み 引き出し52」(クリエイツかもがわ、税別2千円)は、会報「ぽ~れぽ~れ」で2007年から連載する「『つどい』は知恵の宝庫」欄を再編集したもの。介護の悩みと回答を52の事例に絞って紹介している。

 「夫が若年性アルツハイマーと診断された。これからどうしたら」「老老介護。子どももなく先が心配」といった介護者の悩みだけでなく、「認知症の初期と診断された。息子に怒られてばかりで、もう、どこかへいきたい」など患者の心に寄り添う相談も。

 どの質問にも、立場の違う人からの複数の回答を載せた。患者本人、介護中の人、介護を卒業した人、医療や介護の専門家、いずれでもない世話人など、それぞれの視点や経験が生かされている。

 例えば、「夫が認知症になったが、夫の運転がないと生活できない」という事例。医師は法的に運転ができないことを伝え、運転免許を返納した家族を持つ介護者は返納の特典で割引利用できるようになった路線バスやタクシーを活用した経験を語る。「自動車事故の被害者を想像して」「奥さんも介護サービスを利用しては」と提案する介護支援者も。

 会報ではここまでだが、本ではさらに、相談者が「そのあと、どうしたか」も加えた。

 運転の事例では、買い物は息子の運転で行くようになった。相談者自身も要支援の認定を受けて、夫と一緒にデイサービスに通うように。車なしでも夫と一緒に楽しく生活できることを紹介している。

 返納のてんまつは、全国の支部で受けた相談の実例を参考にして、独自に再構成したものだという。

 知恵と経験を持ち寄って、冷静になったり経験を共有したりして、前を向くきっかけをつかむ。こうした手法は、同会が発足当時から大切にしている「つどい」精神にもとづく。

 「介護に正解はない。答えも一つではない。いろいろな回答や事例から、自分に合うものを見つけて、参考にしてもらえれば」と鈴木森夫代表理事は話す。(権敬淑)

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