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 埼玉県内で窃盗事件の総数が減った一方で、無人の店舗から金品などを盗む「出店荒らし」が急増している。犯人が警察が警戒を強める特殊詐欺からシフトしている可能性や、コロナ禍の影響もあるとみて、県警は注意を呼びかけている。(黒田早織)

 「14年以上ここで店をやってきて初めて。なぜうちが」。県東部にあるカフェのオーナーの女性は振り返った。

 6月19日、女性は朝9時ごろにいつも通り出勤し、店内の掃除や仕込みを済ませた。約2時間後の開店間際、お金の準備をしようとレジ横に置いていた小銭入れを手に取ると違和感があった。「軽い」。中身は空っぽだった。他にも、ポーチに入れていた紙幣や小銭など、おつり用の現金計10万円が消えていた。店内は、見た目は普段と全く変わらなかった。

 女性は「荒らされた形跡が全くないのが逆に気持ち悪い。緊急事態宣言中はテイクアウトで乗り切り、今は大変な時期。悔しい」。一方で「それほどもうかっている店ではないことは分かるはず。少しでいいからお金がほしかったのか……」と困惑気味だ。

 店内は淡いオレンジの照明で統一されたおしゃれな雰囲気だが、建物は築約70年。防犯カメラなどの設備はない。警察からは「犯人は裏口の木製の扉をバールでこじ開けて入ったのではないか」と聞いた。店は駅から徒歩圏内だが周囲に商店は少なく、地元で人気のカフェだけに目立ちやすい。

 女性は「『うちは大丈夫だろう』と思い込んでいたら、簡単に侵入された。こういう時だからこそセキュリティーを見直すべきだと思う」と話した。

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 県警によると、県内の1~8月の窃盗犯の認知件数は前年同時期に比べて約6千件減の2万965件。一方で、このうち無人の店舗に侵入して金品を盗む「出店荒らし」は228件から314件に40%近く増えている。

 県警の担当者は、犯人側が警戒強化が進む特殊詐欺を避けて比較的容易に金品を得られる出店荒らしに狙いを変えた可能性を指摘。また、コロナ禍による休職者と失職者の増加や、休業や短縮営業などで店舗が無人になる時間が増えたことが関係しているのではないかとみる。

 こうした事態を受けて、注意喚起に乗り出した署もある。草加署は今月2日、草加市商店連合事業協同組合の理事会で防犯講話を行い、被害の実態を共有して対策を呼びかけた。

 草加市内の1~8月の出店荒らしの被害は16件で昨年同時期の1・6倍。半分以上が飲食店だ。被害額が200万円にのぼった店舗もあるが、多くは1万~10万円だという。

 組合の三井忠理事長は「被害が増えているなんて最近まで知らなかった」。出店荒らしの現状などを解説した草加署の日向昇一生活安全課長は「『防犯カメラ作動中』のステッカーを貼るなど、できることから始めて防犯意識を高めてほしい」と話した。

すぐにできる出店荒らし対策

・防犯カメラを設置する。ない場合も「防犯カメラ作動中」などのステッカーを貼る

・出入り口の鍵は複数つける

・大金はできるだけ店に置かない

・レジや金庫にはお金を入れずに開けておく(レジごと盗まれたり壊されたりするのを防ぐため)

・目につきやすい場所に少額の現金を置く(被害を少なくするためのおとりとして)

※埼玉県警への取材による