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 宮古市の山間部、国道340号沿いに、明治時代から続く校史を閉じた後、まちづくりの場となっている小学校がある。道の駅ならぬ、「里の駅おぐに」だ。昨夏に開店し、3万人以上が訪れたが、新型コロナや冬場を迎える影響で客足の鈍化が心配されている。今夏発売した新商品で活路を見いだす。

 里の駅おぐにがあるのは、10年前に宮古市と合併した川井村の小国地区。その年に約1千人だった人口は今、700人を割り込む。

 2015年、創立139年の小国小学校が閉校した。川井村の職員だった横道広吉さん(70)は減りゆく子どもを目の当たりにしており、05年ごろから閉校を予感していた。学校を残し、活用する方法を模索し始めた。週に1度、子どもから高齢者まで、住民と話し合う機会を設けると、「人が集まる施設を」「この辺りの国道沿いにはトイレがない」「コンビニが欲しい」などの声が出た。

 こうした意見を踏まえ、横道さんは「道の駅のようなものがいい」と思い始めた。ただ、道の駅は駐車スペースやトイレ、バリアフリー化など国土交通省の基準をクリアしなければならない。「里の駅」として運営しようと構想を固めた。国の制約から離れ、自由に活動できる利点があった。市も乗り出し、校舎の改装費などに約1億7千万円の予算を充てた。施設を管理するNPO法人「小国振興舎」が18年に設立され、横道さんが理事長に就いた。

 里の駅おぐには19年7月に開店。地元産の手打ちソバを扱う食堂や売店、24時間利用できるトイレ、計27台分の駐車場などを整備した。食堂の机や椅子は、小学校で使われていたものを再利用。この年の7、8月は4千人以上の客が訪れた。駐車場には県外や市外ナンバーのバイクや車が集まり、横道さんは「小国ではほぼ見ない光景。感慨深かった」と振り返る。

 だが、寒さの影響で今年1月は950人ほどに落ち込み、新型コロナの影響で夏は約2千人と、昨夏の半分ほどに減った。一方で横道さんは挽回(ばんかい)する一手をすでに打っていた。

 実は横道さんは道の駅「やまびこ館」や同「区界(くざかい)高原」(いずれも宮古市)の運営に携わった経験がある。冬場に客足が落ち込んだ時、手軽に買える団子やソーセージ、コーヒーなどを販売すると、売り上げが増えた。「客のニーズに応える大切さを実感した」

 こうした経験は今回もいかされた。里の駅では若者向けの商品が不足していると感じていたため、地域の若い女性の意見を採り入れ、地元特産のそば粉やクルミを使ったシフォンケーキとパウンドケーキの開発を昨秋ごろから始めていた。盛岡市内の洋菓子専門店の協力を得て開店1周年にあわせて7月に販売すると、評判は上々だった。

 まもなく2回目の冬場を迎え、コロナ禍の影響も続きそうだ。でも横道さんは「ネットなどで小国の魅力を伝え、来てもらえる場所にしていく」と意気込んでいる。(緒方雄大)

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 〈全国の里の駅〉 県内では「おぐに」だけ。ほかに里の駅を名乗る施設は京都市や静岡市、山口県岩国市など少なくとも30施設あり、地域の物産を売ったり人々が交流したりする場になっている。約1200ある道の駅に比べ、数も知名度もまだまだ低い。

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