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 津波で大きな被害を受けた県南部の仙台湾沿岸地域に、観光・交流施設が相次いでできている。仙台市中心部から交通の便もよく、コロナ禍の中で、集客は健闘。被災で人々の生活は失われたが、ベイエリアに新たなにぎわいが生まれつつある。

被災跡地に次々

 6月、仙台市宮城野区南蒲生に、大型テントやカフェを備えた天然芝のドッグラン「ガモウパーク」(0・8ヘクタール)がオープンした。3千匹が登録し、休日は愛犬家や見学者ら500人ほどが訪れ、駐車場は満杯が続く。

 仙台市は、災害危険区域となった被災集落の跡地を新たな魅力ある場にしようと、民間による利活用を募ってきた。ドッグランは橋本建機(名取市)が提案。「同種施設では県内最大。これだけ広い用地はなかなか見つからなかった」と同社の担当者は話す。

 市が3年前に始めた利活用募集は、5地区計45ヘクタールで16事業者が決定、99%の面積が埋まった。

 若林区荒浜地区では、JR東日本グループの仙台ターミナルビルが体験型の観光果樹園(11ヘクタール)を来春に開く。ブドウやナシ、キウイなど通年でフルーツ狩りができるようにする。藤塚地区では、建設業の深松組が農園、温泉などの複合施設「アクアイグニス仙台」(3・8ヘクタール)を2022年にオープン予定。レストランは奥田政行シェフらが監修する。

屋外型が堅調

 動きが目立つのが名取市だ。沿岸集落の多くが内陸に移転する中、閖上地区は現地で街を再建。人口規模は半分以下に縮んだが、市は代わりに交流人口の拡大に力を入れてきた。

 19年4月、眺望抜群の名取川堤防上に商業施設「かわまちてらす閖上」がオープン。関係者の期待を上回る集客で、コロナで一時期落ち込んだが、今年7月は前年を上回った。

 閖上には、青森県~福島県沿岸を結ぶみちのく潮風トレイルの拠点「名取トレイルセンター」や、津波で被災し再建された「サイクルスポーツセンター」もできた。山田司郎市長は「朝市を含め、コロナ禍でもオープンエアで楽しめる資源がそろっている。サイクルツーリズムの可能性もあり、他地域の施設との相乗効果を期待したい」。

 隣の岩沼市では、沿岸の集落跡で羊30頭を放牧する「いわぬまひつじ村」(3ヘクタール)がユニークだ。青年海外協力隊員OB組織が被災者支援の一環で始めたが、子どもたちの人気を呼び、年間3万人を集める観光牧場に発展した。

 震災伝承施設では仙台市荒浜小に続き、山元町中浜小学校も震災遺構として9月、公開が始まった。

ポストコロナ視野

 「これまで観光の軸足は県北に偏っていた。県南も魅力的な食やみどころが多く、仙台空港もあり、実はポテンシャルが大きい」と話すのは、ホテル佐勘(仙台・秋保温泉)の佐藤勘三郎社長。「施設が増えて点が線になり、ルートができる」と期待する。

 同社は17年から亘理町の「わたり温泉鳥の海」の経営を受託し、閖上のサイクルセンター運営にも参画。地元客中心だったわたり温泉は仙台や関東の客が増え、今年9、10月の予約は前年の1・5倍だ。

 県南部の広域観光戦略を担う「宮城インバウンドDMO」の斉藤良太代表は、こう見る。「新たな施設を結ぶストーリーを、どう見せ、発信するかがカギ。サイクリングやトレイルといったアウトドアのコンテンツはコロナ禍に強く、海外の関心も高い。インバウンドが復活すれば、欧米豪圏からの客も取り込める」(編集委員・石橋英昭

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