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 山田知英記者に代わり、今回走る筆者は、スポーツ自転車歴約10年。「上達しない中級者」を自任し、ロードバイクで山道を駆けるのが好きだ。秋風を感じ始めた紀南・那智勝浦町で海、山、滝、グルメを堪能するコースをめぐった。

 10月2日、JR那智駅の東の那智湾に面した海水浴場「ブルービーチ那智」をスタートした。約800メートルの白砂と青い芝生が続き、青い海と空、芝生が「青さ」の競演をしているようだ。海岸沿いには、屋外カフェが12月中旬まで開かれている。カフェ自慢のバナナジュースを飲み、那智大滝を目指してペダルを踏み込んだ。

 県道43号を那智川に沿って北西へ。3キロほど走ると、9年前の紀伊半島大水害の犠牲者を悼む記念碑が右手に見えた。降車して、手を合わせた。

 世界遺産・熊野古道の観光スポット「大門坂」に近づくあたりから坂が急になってきた。斜度7%ほどのつづら折りを立ちこぎ(ダンシング)で乗り越えると、右手奥に那智大滝が現れた。

 駐輪場所に自転車を止めて、滝までの石段を歩いて下ると、快晴の空から豪快な水しぶきが降り注いでいた。落差133メートル。日本一の名瀑(めいばく)だ。古来、ご神体としてあがめられてきた。

 大滝にも手を合わせたあと、妙法山(750メートル)方面へ。斜度6~10%ほどの坂道を上り続ける。ほとんど交通量がなく、鳥のさえずりとタイヤとチェーンの音しか聞こえない。こんな「非日常」に気軽に浸れるのも、自転車旅の魅力だ。

 左手に青い熊野灘が見え隠れする。峠付近にある「県朝日夕陽百選」の「那智山見晴台」で、ひと休み。眼下に海と紅葉が始まった山並みが広がる。改めて紀南地域の自然の豊かさを実感した。

 しばらく走ると、下り坂に入った。あちこちで、大雨で流れ込んだらしい土砂や石が路肩を覆っている。危険な場所は降車して歩く。ブレーキをこまめに効かせて慎重に、でも笑顔でダウンヒルを楽しんだ。ただ、下り坂が約10キロも続くので、路面の状態をしっかり確認し、集中力を保つのが肝要だ。

 出発地のブルービーチ那智を通り過ぎて、町市街地へ。那智湾の南岸にある「弁天島」前に着いた。海に立つ岩山で、赤い鳥居があり、「白蛇弁天」を祭っている。このあたりは、地下の泥や砂の層が上昇して岩になった「泥ダイアピル」と呼ばれる地層。波しぶきが奇岩を洗う絶景を楽しめる遊歩道が、ここから続いている。自転車を降りてゆっくり観賞したい。

 おなかがすいたので、特産品がそろう観光施設「にぎわい市場」へ。一度も冷凍していない「生マグロ」のすしを味わった。深い滋味に、うなった。

 この日のコースは距離約39キロ、獲得標高(上った坂の高さの総計)634メートルで、中上級者向き。長い坂が苦手なら、那智大滝まで往復して、町市街地をめぐるコースがお薦めだ。(直井政夫)

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