[PR]

 性暴力などでの望まない妊娠・出産から女性を守りたい。そんな動きを後押しする店を2日、岡山市北区に開いた。店名は「パブリックスペース 日替りママ」。元教諭や心理学者、ステンドグラス作家……。人脈から集めた様々なキャリアの20人ほどが、ママとしてカウンターを日替わりで彩る。

 売り上げの20%を基金として積み立て、女性に緊急避妊薬や宿泊場所を用意した団体にその費用を提供する。

 2018年秋に岡山市北区国体町で一風変わった飲食店「カフェ・定食ぽん太」を開いた。店内の「恩送り板」を介して食券を客同士で融通し合う。余裕がある人からない人へ。助け合いの心を「テゴ」だと考えている。岡山弁で「手助け」の意味だ。

 ある時、切羽詰まった様子の女性が「ぽん太」を訪れた。「働きたい」と言う。事情を聴くと、同居している婚約者の経営する飲食店で無給で働かされ、逆らうと暴力を振るわれているという。「逃げたいけれど、金も住む場所もない」と、泣いた。

 「これもテゴか」。アパートの保証人を引き受け、夜逃げを手伝った。「公的な支援が届きにくいところに、おばさんのおせっかいが役立つことがある」。実感した。

 この女性といろいろ話しているうち「母親から『あんたなんか産まなければよかった』と言われ続けていたんです」。ぽつりと語った。

 この言葉に、さまざまな社会支援活動で出会った女子中高生たちのことが重なった。

 「体育の授業中に体調不良で搬送され、そのまま出産した」「中学生の時から売春を繰り返し、相手に性病をうつされた」……。

 望まぬ妊娠出産が、貧困や虐待、そして不幸な生につながっているのではないか。この連鎖を、どうすれば断ち切れるのか。

 「緊急避妊薬を提供できないか」。性交後72時間以内に服用すると望まぬ妊娠を避けられる。知り合いの薬剤師にたずねると、公的医療保険は適用されないため、薬代だけでも5千~1万円必要で、加えて医師の診察料もかかると知った。

 資金集めに悩んでいる時、知人のスナック経営者から相談を受けた。高齢になり、一人で店を続けるのは難しいという。

 ひらめいた。「パブを開いて、資金を集めよう!」。ママは「テゴ」で募って、日替わりにすれば、お客も面白がってくれるのではないか。それに、飲むだけで支援になる。「大義名分」があればよりいい気持ちで酔えるだろう。

 おせっかいおばさんの優しくてしたたかな計算で「パブリックスペース 日替りママ」が生まれた。「店内で楽しい時間を過ごしつつも、女性への支援について考える場所になったらうれしい」

 さて、今夜のママはどんな人だろう。(菅野みゆき)

     ◇

 よこた・としこ 岡山大法学部卒業後に2級建築士の資格を取得。32歳で設計事務所を開き、約20年間経営した。赤磐市出身の詩人永瀬清子(1906~95)の生家の保存活動をするNPO法人「永瀬清子生家保存会」の理事長も務める。「ぽん太」への問い合わせは(080・5626・1453)。

     ◇

 「パブリックスペース 日替りママ」(岡山市北区内山下1丁目、086・226・1100)は、平日のみ午後6~10時に営業。チャージ2千円。売り上げ目標は月50万円で、支援基金のほか、ママの報酬を20%とし、残りで必要経費をまかなう。支援先に決まっているのは、女性や子どもを支援する岡山市のNPO法人「さんかくナビ」など3団体。ママは50人ぐらいにしたいといい、男性「ママ」も歓迎している。