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 詩の一節を記したパネルを天井からつり下げた「言葉のシャワー」、作品に登場する生活用品や工具を、詩から「取り出した」ように並べる展示――。2016年春に前橋文学館(前橋市千代田町3丁目)の館長に就いてから、展示室の空間全体で詩や文学を感じられる演出に力を入れる。就任前の15年度に2万6千人だった入館者数は18年度、6万3千人に増えた。

 祖父は前橋市出身の詩人・萩原朔太郎、母は小説家の萩原葉子。新宿のジャズ喫茶でアルバイトをしながら仕事を探していた20歳の頃、知人の紹介で劇作家の寺山修司と出会い、演劇の世界へ足を踏み入れた。

 寺山が主宰した1960~70年代を代表する前衛アングラ劇団「天井桟敷」に参加。役者や演出家として在籍後、映像作品を作りながらパロディー雑誌として人気を集めた「ビックリハウス」の編集長に。ユニークな企画で人を引き付ける力は、このころに磨いた。

 「ガラスケースに入った資料をありがたがる時代は終わった」と朔美さん。「文学館は人と言葉の出会いの場所。学べという上から目線でなく、こんなに面白いんだと問いかける発信地にしなければ」と話す。

 文学館の展示には、そのための工夫がたくさん。企画展のタイトルは、さながら雑誌の見出しのようだ。近現代史に描かれる心情や感情がテーマなら「春は文学館で きゅん。」。芥川龍之介と萩原朔太郎を取り上げた展示は「この二人はあやしい」など……。チラシも「行ってみたい」と思わせるようなおしゃれなデザインを心掛ける。

 展示の傍らにスマホをかざすと、作者の肉声が聞こえる仕掛けも取り入れた。「『見学』ではなく『体験』したと思ってもらいたい」と話す。

 現在は、詩や文学の理解が難しい子どもにも楽しんでもらえるよう、さらに五感へ訴える展示も模索している。「大人から子どもまで、人は言葉に生かされている。訪れた子どもたちが大きくなったとき、初めて本や言葉と出会ったと思える場所にしていきたい」(松田果穂)