[PR]

 昨秋の台風19号で県内の犠牲者(関連死除く)の3分の2は65歳以上だった。市町村は、自力での避難が難しい高齢者や障害者を登録した名簿を作り、誰が支援し、どこへ避難するかを一人ひとり決めておく支援計画の策定が求められているが、思うように進んでいない。地域の支える力をどう生かすか。課題は尽きない。

     ◇

 避難が難しい高齢者や障害者を登録した「避難行動要支援者名簿」の作成は、2013年の災害対策基本法改正で国が市町村に義務付けた。対象者の基準や名簿を共有する範囲は市町村で異なる。

 福島市の場合、65歳以上の一人暮らしや要介護3~5、身体障害者手帳1~2級などに該当する人に登録申請書を郵送。避難に介助が必要かどうかや、家族や地域の支援者の氏名・連絡先などを記入し、これらの情報を町内会や消防、民生委員などに提供することに同意して市に返信する。申請者は名簿に登録され、地域の協力で個別の支援計画が策定される。7月現在で43%にあたる1万2019人が同意し、登録された。

 市の担当者は「自分は元気だから登録は不要という人もいるが、個人情報を知られたくなくて同意しない人もいる。このため9月に登録を改めて呼び掛ける通知を発送した」と話す。

 いわき市も6月、未登録の8749人全員に申請書を送った。その結果、「同意率が45%から57%に上がったが、まだ半数近くが未同意。あらゆる媒体で制度を周知したい」とする。

 県によると、昨年6月時点で県内全体の同意率は41%。台風19号で須賀川市では1人暮らしの高齢者2人が亡くなったが、いずれも名簿に登録されていなかった。市の担当者は「未登録の人であっても、地域で避難の声掛けをしている。だが町内会に入っていない人やアパートに住む人は把握が難しい」と指摘し、名簿登録の必要性が増しているという。

 台風19号の県の検証委員会は9月の最終報告で、個人情報の本人同意が必要なため名簿の登録が進んでいないと指摘。市町村が条例を制定することで、同意がなくても名簿を共有できる仕組みにするよう促した。これに対し、ある市の担当者は「個人情報は重くハードルが高い。国が法律で規定すべき」と話す。

     ◇

 要支援者一人ひとりを誰がどう避難させるかを定める支援計画。県によると、昨年6月現在で県内では約16万人が名簿に登録されているが、名簿を活用して計画の策定が済んだのは11市町村。19市町村は未作成だった。

 今も未着手の南相馬市は「どういう支援をするかを模索している段階。被害想定区域を優先して策定したい」。台風19号で7人が犠牲になり、うち3人が名簿に登録されていた本宮市は策定率がまだ2%。「災害時に役に立たない計画では意味がない。精度をどこまで上げ、どんな項目を入れるかを検討中」と話す。

 こうした中、計画を充実させようと、福祉の専門家や事業所が連携し、本人の状況に即した計画作りをした地域もある。

 台風19号で浸水被害が相次いだ福島市郷野目地区は今年6月から4カ月かけ、41人分の「個別避難支援プラン」を改定した。

 町内会の役員や消防、民生委員、ケアマネージャーら、防災や福祉の専門家も加わった会議を7回開催。要支援者宅を訪問し、離れた家族や福祉施設にも連絡を取って聞き取りをした。プランには、自宅の構造や浸水想定水位、避難先や支援方法、利用する福祉施設やケアマネージャーの連絡先などを記載し、会議で誰が支援するかを決めた。

 町内会の尾形武治会長は「歩行が困難、車がないなど状況を一人ずつ把握し、避難の声掛けをはじめ、どんな支援が必要かを協議した」。避難場所は、自宅2階、集会所、町内会と協定を結んだ自動車会社の建物など様々で、福祉施設の支援で「福祉避難所」に行くことにした人もいる。

 要支援者には備忘録も配布。避難場所や支援者の連絡先などを記入した紙で、冷蔵庫など目につきやすい所に貼ってもらった。

 課題も残る。地区には約700世帯あるが、アパートの増加で町内会の加入は約300世帯にとどまる。支援者は町内会の役員が多く、1人で4人分を受け持つ人も。尾形会長は「支援者が災害時に不在だったり被災することもあり、どこまで避難を手伝えるかはその時次第。プランを最新の内容に更新する作業も欠かせない」と指摘する。(深津弘)

関連ニュース