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 コロナ禍で舞台芸術の場が失われるなか、岐阜県瑞穂市の朗読グループ「みずほ朗読の会 朋(とも)」は31日、公演を再開する。表情豊かに演じるのは、郷土史に根ざした朗読劇「千本松原」。客席に舞台の空気を伝え、「コロナの時代にも言葉で人の心をつなぎたい」と願う。

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 「そこ、もっと笑ってもいい」「2人とも前を見ているけれど、会話をしている感じを出さないと」

 公演が半月後に迫った今月半ば。市内の公民館に三島幸司代表(70)のげきが飛ぶ。本番では出演者全員が客席の方を向いて朗読するが、それぞれが表情をゆがめて驚き、大きく口をあけて笑うなど情緒豊かに演じる。舞台を去る所作にも、登場人物の思いをにじませる。

 「千本松原」は、江戸時代の木曽三川の治水工事(宝暦治水)がテーマ。輪中に住む主人公の少年・与吉が、工事を手がけた薩摩藩士と交流しながら成長する姿を描く。岐阜を代表する児童文学家・故岸武雄さんの原作だ。

 主人公は、午前と午後の部で演じ手が代わる。午後の部で演じる坂下香菜さん(28)は「公演はやり直しがきかない一発勝負。表情と声の力を届けたい」。薩摩藩士役の神山渉さん(42)は、去り際の歩き方にもこだわる。「堂々と胸を張り、武士のりりしさを伝えたい」

 「朋」は創立13年目。岐阜市のアマチュア劇団「劇団はぐるま」で40年近く活動してきた三島代表が「創作活動を広げよう」と、自宅のある瑞穂市で立ち上げた。今のメンバーは20人ほどで、年代も20~80代と幅広い。昼間は小中学校の教員や福祉関係の職員などとして働き、週1、2回、夜に公民館に集まって練習してきた。

 地域に根ざした朗読劇にこだわり、民話や地域の伝承をもとに演じることも多い。「千本松原」はこれまで最も多く演じた作品。このほか、「あほろくの川だいこ」は、瑞穂、大垣両市に伝わる民話をもとに、地元の水害を描いた物語だ。

 今年6月には20回目の公演を予定していたが、コロナ禍で中止に追い込まれた。その後、公演を中止した団体などを支援する県の助成金が新設され、助成を受けて今回の公演にこぎ着けたという。

 会場では客席の間隔を空けるなどの感染対策を取り、出演者は舞台の上でマスクを着けずに朗読する。「客席と舞台が同じ空気を吸い、耳で言葉を聴くことで、人と人の心をつなぐことができる」。三島代表は力を込める。

 開演は午前11時と午後3時、岐阜市学園町の「ぎふ清流文化プラザ 長良川ホール」で。無料だが事前申し込みが必要で、入場整理券を配布する。問い合わせは三島代表(090・1780・4729)。(高木文子)

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