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 生産量が全国シェアの5割以上を占めるマダイに、「全身トロ」と評されるほど脂の乗りがいいスマ。愛媛県南予地方の宇和海で魚の養殖が盛んなのは、産学官の連携も一因のようだ。宇和海の海水温や赤潮の発生状況など、水産関係者が知りたい情報を集めた海況情報サービス「You see U-Sea」を、愛媛大学大学院理工学研究科の分散処理システム研究室(小林研究室)が県とともに構築した。

 研究室が宇和海での活動を始めたのは5年ほど前。大学の南予水産研究センターから赤潮の観測について相談されたのがきっかけだった。カメラによる観測では、日中か夕方かで色合いが変わったり光が水面で反射したりして、正確な色を識別できない。研究室が着目したのが、「漁師からの情報」だった。

 それまでも漁業者からセンターに赤潮の目撃情報が寄せられていたが、正確な場所や時間帯は分からなかった。そこで、水面の変色を見つけたらスマートフォンで写真を撮り、色や変色の範囲を入力してもらうシステムを開発。写真のGPS情報や撮影日時の情報から、観測地点と時間帯を特定できるようになった。

 さらに、水深1~60メートルの複数の深度で海水温を測定できる装置を開発した。北は伊方町から南は愛南町まで、宇和海沖にあるいけす17カ所に取り付けた装置からデータを集め、海況情報サービスで公開。海水温の変化から潮流の状況を把握できるようにした。

 「海水温や潮流は赤潮と関係し、養殖業者の『餌止(えど)め』に深く関わっている」と小林真也教授(58)。赤潮が起きたら餌やりをやめて魚をおとなしくさせ、酸素をできるだけ消費しないようにしなければならない。ただ餌止めは魚の成長も止めるため、長く続けたくはない。小林教授は「ICT(情報通信技術)を活用して漁業者に餌止めの適切な期間を把握してもらい、ジレンマを解消したかった」と話す。

 現在は、養殖いけすの中で泳ぐ魚の数を正確に数えるシステムの開発に取り組んでいる。魚が何匹いるかは餌の量を調節するのに必要な情報だが、群れて泳ぐ魚の数を数えるのは難しい。そこで活用するのが、人工知能(AI)だ。

 海中に設置した3台以上のカメラでいけす内を撮影し、映像を5G通信でサーバーに送信。AIによる画像認識技術を使って魚の数を把握するという。さらには、魚の泳ぎ方を測定し、病気や赤潮による衰弱を早期発見する技術の研究も進めている。

 「工学の工は、工夫の工」と小林教授。社会で起きている課題を正確に捉え、研究で得た知見とともに既存の知見も生かす知恵を発揮する技術者を育てたいという。「開発した技術が『最先端』と言われているうちは、まだまだ。学生には、誰にも気づかれずに社会を支えるような技術を確立してほしいんです」(伊東邦昭)

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 愛媛大学大学院理工学研究科分散処理システム研究室(小林研究室) 1999年に開設。社会の課題を教育に取り入れて研究開発し、課題の解決を図りながら学生の指導を行うことを、研究室のポリシーに据える。愛媛県宇和島市津島地区のコミュニティーバスの運行状況を、地図上にリアルタイムに表示するサービス「B-Map」を2013年に開発、14年春に実用化した。

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