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 菅義偉政権は発足早々、「デジタル庁」の創設を掲げました。自治体間の情報管理や医療、教育など省庁間でのデジタル業務を集約化するのが狙いです。日本の行政のデジタル化は諸外国より「一周遅れ」との指摘もあるなか、日本の現状や参考にできる海外の事例について、2人の専門家に聞きました。

 まずは、公共・金融分野のデジタル技術に詳しく、内閣官房でマイナンバー制度を支える情報システムの構築に携わる楠正憲さんのお話です。

――日本のデジタル行政は諸外国よりも遅れている、という指摘があります。本当ですか?

 「確かに日本よりデジタル化が進んでいる国はたくさんあります。『デジタル庁』が浮上して以降、メディアなどではよくデンマークやエストニアの事例が取り上げられています。国連が発表した2020年の世界電子政府ランキングではそれぞれ1位、3位にランクインしています。日本はというと、前回の10位から14位にダウンしました。ただ、この二つの国と日本を比較しても、あまり意味はありません」

 ――どうしてでしょう?

 「まず、国の大きさが違います。デンマークの人口は約580万人、エストニアは約130万人です。さらに、日本は1970年代ぐらいから行政の電子化を目指してきたわけですが、両国はいずれも90年代から電子化に乗り出した後発組です」

 ――なぜ後発組がデジタル先進国になっているのですか?

 「一言でいってしまうと、ITが発達する90年代に、『白地』からデジタル化をはかることができたからです。特に旧ソ連崩壊後の東欧の国々は、コンピューター設備の乏しい段階から一気にIT化に着手できました」

 ――日本は違うのですか?

 「よく日本の行政は縦割りだと言われます。この意味からご説明します。日本には古くから戸籍があり、日中戦争のころは配給を行うため、居住地の実態に即した世帯台帳が作られました。67年に住民基本台帳ができたことで世帯台帳はなくなりますが、所管は法務省から自治省(現総務省)に移りました。戸籍は法務省の所管ですから、『名簿』の所管元が分かれているわけです。さらに、ちょうどこの頃から政府機関や全国の自治体がコンピューターの導入を始めます。日本には富士通、日立、NECなど様々なベンダー(業者)があり、それぞれの役所がバラバラに行政システムの整備を委託しています。同じような業務をしている役所間で情報共有が難しい要因の一つがここにあります」

 「しかも、その後地方分権なども叫ばれるようになります。現在、政府が目指しているのは全自治体における住民記録や地方税、福祉などの主要業務をデジタル上で一律に管理できるようにすることです。政府内で言えば、総務省はマイナンバーカードの普及、厚生労働省は健康保険証や医療分野、文部科学省は学校教育の現場などでデジタル化をはかり、それぞれの予算や権限を集約し一括管理しようとしています。それがデジタル庁構想ですが、組織ごとに記録の扱い方がバラバラなわけで、IT化だけ進めればいい、というわけではないのです」

 ――どこか参考にできる国・地域はありますか?

 「もともとはほぼ同じ行政制度…

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