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 劇団員の稽古や公演は労働ではないのか――。元劇団員が起こした訴訟で、東京高裁が「稽古や出演は労働だ」と認めた異例の判決が確定した。劇団の経営を考えると提訴することに悩みもあったという元劇団員が、訴えに込めた「願い」とは何だったのか。

 「好きなことを好きでやっているから、つらくて当たり前と刷り込まれていた」

 原告として提訴した末広大知さん(34)は取材に、劇団にいた当時をそう振り返った。中学生のときに見たテレビドラマがきっかけで俳優を志した。2008年、22歳で、エアースタジオ(東京)が運営する劇団に入った。二つの劇場を都内に持つこの劇団は毎週のように公演を行い、年間公演数は約90回にのぼる。

 最初の5年間は無給だった。のちに月6万円をもらえたが、出演が決まると、稽古に加え小道具や照明などの準備で1日の活動は12時間を超えた。舞台装置を夜通しで作り替える作業もほぼ毎月あり、1カ月間休みがないこともあった。節約のため3個入り100円のメロンパンで1日をしのぎ、「芸術を志す人は稼げなくて普通」と思い続けたという。

 16年春。2晩徹夜したあと小道具に使う材料を買いに劇場の外に出た。ビルのガラスに、やせ細りひげが伸びた自身の姿が映った。「後戻りはできないし、したくない。でも働いてもこれ以上お金はもらえない。もう、がんばれない」。退団するしかなかった。

 その後会社に勤めながら、未払い賃金や慰謝料など約1100万円を求める訴えを東京地裁に起こした。エアー社は「劇団活動は自主的で強制していない。労働ではない」とし、6万円支給は「あくまで活動支援」と主張した。

 昨年9月の一審・東京地裁判決は、小道具準備などの裏方作業を労働と認め約51万円の支払いを命じたが、稽古や出演への対価は「参加しない自由もある」と認めなかった。

 今年9月の東京高裁判決は、稽古や出演も「運営会社が場所や時間を決めて指揮命令しており労働だ」と一転して認め、約185万円の支払いを命じた。判決は同月、確定した。

 末広さんは、訴訟を起こすことに「罪悪感」もあった。賃金が発生すれば経営が成り立たない劇団も出てしまい、ほかの俳優が舞台に立つ機会を奪ってしまうと考えたからだ。だが「私のように途中で夢を諦める人を減らしたり、芝居を続けられる新たな環境を考えたりするきっかけを作りたい」と思い、あえて提訴に踏み切った。

 末広さんの代理人弁護士は「個…

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