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 4月時点の待機児童は岡山県内で403人。減少傾向にはあるが、政府が旗を振る「待機児童ゼロ」にはなお遠い。受け皿数はニーズを満たしても、保育士不足による定員割れが続出。県などが対策を打つが、保育士争奪戦はエスカレートする一方だ。

 「広々とした部屋でしょう。でも、これ以上受け入れられないんです」

 岡山市中区の閑静な住宅街にある認定こども園「とみやまこども園」。園児10人ほどがボール遊びをするなか、山本直子園長(56)がため息をついた。

 定員は0~5歳の計105人だが、受け入れは86人(9月時点)にとどまる。主な原因は保育士不足だ。

 子どもの数に対する保育士の数は法律などで決まっており、定員通り受け入れるには5人ほど足りない。今春に向け必死に採用活動をしたが、新卒は1人も採用できず、苦渋の受け入れ見送りとなった。

 昨秋の幼保無償化もあり、市内でも認可保育施設への入園申し込みは増加。急速に整備が進められた受け皿は入園申込数を上回っているが、担い手不足が顕在化した。市全体では259人の待機児童(4月時点)が出た一方、183の認可保育施設の36・6%が保育士不足などで定員割れした。

 県内の保育士の有効求人倍率は高水準で推移し、8月は2・17倍。単純に比較はできないが、県全体での1・43倍とは大きな差がある。

 争奪戦も激化した。公立園を定年退職し、私立園に移った園長が旧知の保育士を引き抜く。施設の職員に保育士の勧誘を呼びかけ、紹介料を支給する――。こんな事例は「珍しくもない」と保育関係者は言う。

 各施設はあの手この手で保育士確保に走るが、待遇改善には限界がある。厚労省によると保育士の平均賃金は月約24万円(2019年)。とみやまこども園の山本園長は「県内でも高い水準に設定しているはずだが……」と嘆く。ブログなどで「働きやすい職場」をアピールするのが精いっぱいだという。

 さらには新型コロナウイルスが今後に影を落とす。「3密は不可避」という職場は精神的負担も大きく、「敬遠されるのでは」との心配が消えない。

 「子どもが大好きで働いている保育士の頑張りに、行政は目に見える形で応えてもらいたい」。山本園長は県の新しいリーダーにそんな願いを託す。

     ◇

 県などが力を入れてきたのが、離職するなどした「潜在保育士」の掘り起こしだ。県の推計では1万人ほどいるとされる。

 県は17年に「県保育士・保育所支援センター」を設置し、掘り起こしを本格化。約3年で183人(9月末時点)の就職が決まった。今月からは同センターに「保育士就職マッチングシステム」を導入。求職中の保育士が、希望に沿った勤務条件の保育施設をスマートフォンなどで調べられるようにし、利便性をアップさせた。

 自治体にも動きが出ている。岡山市は今年度、賃金の上乗せ率を2%から3%(月9千円)に引き上げ。すでに奨学金の返済支援なども打ち出している。

 ただこういった対策に、現場は満足していない。市私立認可保育園・認定こども園園長会の高山学会長(63)は「離職の原因から丁寧に探るべきだ」と指摘。「低賃金」「業務過多」が主な原因と分析し、「現状の支援では不十分だ。もっと思い切った待遇改善を」と求める。

 高山さんが危機感を抱くのは、隣り合う兵庫県の自治体の動向だ。採用1年目から勤続年数に応じた一時金を支給。明石市は最大160万円(7年間)、神戸市も160万円(同)と差別化をはかっている。西宮市は保育士1人に対する子どもの割合の基準を独自に設け、負担軽減などをPRしている。高山さんは「岡山の人材を採りに来ている。県を含め自治体は岡山で働く『売り』をもっと打ち出してほしい」と話す。(華野優気)

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