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 昨年9月に引退した大相撲元関脇・嘉風(よしかぜ)の中村親方(38)が、出身地の大分県佐伯市をPRするために渓流下りをして大けがをし、引退を余儀なくされたとして、市などを相手取り、計約4億8千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。市への取材でわかった。市側は「市のPRとして依頼はしていない」と争う姿勢を示している。

 市によると、渓流下りは「キャニオニング」と呼ばれ、乗り物には乗らずに岩肌を滑り降りるアウトドアスポーツ。佐伯市が観光施策として業者に委託し、藤河内(ふじがわち)渓谷で実施。7年間で4千人以上が利用したが、ほかに大きなけがをした人はいなかったという。

 中村親方は現役力士だった昨年6月20日、市の委託業者のインストラクターとともに渓流下りを体験。その最中に右ひざに大けがをした。ドクターヘリで病院に搬送されたが、足首などにまひが残り、装具をつけなければ歩行も難しい状態となり、引退を余儀なくされたという。渓流下りには市職員も同行していた。

 中村親方側は、市が誘致した部屋の一部力士の合宿の中で市のPRのために渓流下りをし、事故につながったと主張。一方、市側は「合宿は市が誘致したが、キャニオニングは市のPRのためではない」とし、双方の弁護士を通じて話し合っていた。

 佐伯市の田中利明市長は中村親方が小学生のころから市相撲連盟の副会長や会長を歴任。田中市長は昨年10月の定例会見で「道義的責任を感じている。合宿そのものは市が誘致した。キャニオニングに行く前にも連絡があり、プロのアスリートだから気をつけていけよと(職員には)伝えた」と明かしていた。

 田中市長は19日、朝日新聞の取材に「訴状の内容を精査し、対応していきたい」とコメントした。(佐藤幸徳、倉富竜太)