ウィズコロナの祭りとは 茨城に移住の芸術家が映像作品

久保田一道
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 コロナ禍で祭りを絶やさないために――。茨城県ひたちなか市に移り住んだ芸術家が地域住民に問いを重ねたインタビューを、映像作品にまとめた。「何を守り、何を変えるべきか」を考える機会にしようと、小さな企画展で上映している。

 映像を制作したのは、同市の那珂湊地区でアトリエを開く臼田那智さん(29)。東京都内の美術大を卒業後、那珂湊の芸術祭にかかわり、2017年に移住した。

 作品のテーマは、地区の祭礼「八朔(はっさく)まつり」の将来だ。隔年の夏に開催され、祭りのない今年も山車を引くイベントが予定されていたが、中止となった。臼田さんはコロナ禍の芸術活動の経費を支援する文化庁の事業を活用。カメラを手に老若男女10組から聞きとり、約35分間の映像にまとめた。

 登場する人の立場はさまざまだが、共通するのは祭りを絶やしたくないという思いだ。

 子どものころから50年以上参加してきた男性は「みなとの活性化は祭りしかない。街を出た人も戻ってくる」。若手の女性参加者は「好きとか嫌いとかじゃなく、全身の血がさわいじゃう」。臼田さん自身、地域の子どもと山車を作る活動を続けてきた。体をぶつけ合う瞬間にひかれ、「言葉を超えたコミュニケーション」と醍醐(だいご)味を語る。

 作品の終盤では、「コロナ禍で、どう祭りを実行できるか」という問いかけが続く。

 祭りの存続を願い「保存会」を立ち上げた高校生2人は「ソーシャルディスタンスを保つ祭りって逆に面白くない?」「無理じゃない? やるならもう、やっちゃった方が……」と話し合う。ほかの住民も、一様ではない思いを語った。臼田さんは「インタビューを重ねた今も、答えは出ない。でも、少しでも多くの人の声を聞いてほしい」。

 企画展は、ひたちなか市役所那珂湊支所の展示室で24日まで開かれている。インタビューの映像は近く、「ウィズコロナ時代に、那珂湊の祭りにとって本当に大切なものをみんなで考える展」というタイトルでユーチューブにもアップする予定だ。(久保田一道)

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