[PR]

普賢菩薩坐像(県指定 草津・志那神社)

 琵琶湖岸にほど近い草津市志那(しな)町に志那神社はあります。祭神は「古事記」で風の神とされる志那津彦命(しなつひこのみこと)、志那津姫命(しなつひめのみこと)、伊吹戸主命(いぶきどぬしのみこと)で、摂社として白山(はくさん、石川・岐阜県境)の神も祀(まつ)られています。

 その志那神社に伝わるのが本像です。神社に仏像が祀られるのは、人々を救済するために仏や菩薩(ぼさつ)が神の姿で現れるという思想があったからです。この普賢(ふげん)菩薩も、いずれかの神の元の姿だったのかもしれません。

 本像は像底の銘文から、建武元(1334)年に性慶(しょうけい)が造ったことが分かります。性慶は当時京都の大寺院であった西園寺(さいおんじ)の大仏師を名乗り、「法印」という高位の仏師の位を有していたことから、京都で活躍した当代一流の仏師だったようです。45センチに満たない小像ですが、本像からもその技量の高さがうかがえます。

 彼は自らを東大寺南大門の金剛力士像で知られる運慶(うんけい)の系譜(慶派)に連ねて語っています。しかし、本像のように整った穏やかな表現は、ややあくの強い当時の慶派とは異なります。

 とはいえ一流仏師が造った、神仏習合をうかがわせる像が伝えられたことは、近江の歴史文化の奥深さを物語っています。(主任学芸員 和澄浩介)

     ◇

 栗東歴史民俗博物館(滋賀県栗東市小野)で開催中の「栗太(くりた)郡の神・仏 祈りのかがやき」展に出品。会期は11月15日まで。入場無料。

関連ニュース