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 西洋美術史が専門の圀府寺(こうでら)司・大阪大学教授は、現存するだけで800通あまりもの手紙を書いたことで知られるゴッホの研究の第一人者だ。日本では19年ぶりの新訳となる書簡選集「ファン・ゴッホの手紙Ⅰ・Ⅱ」(税別1万8千円)を今月20日、新潮社から出した。

 今も流通している最初の書簡全集は、ゴッホの義妹の手で都合の悪い記述が削除されていた。オランダのファン・ゴッホ美術館は2009年、専任スタッフ3人がかりで15年かけ、手紙の日付から言及された美術作品、引用元まで徹底的に洗い直した改訂版を出版した。「ある種の世界遺産。ちゃんと伝えておきたい」と実は嫌いな翻訳作業に腰を上げ、特に重要な265通を6年がかりで訳した。

 小難しい聖書の引用、へりくつこねて金の無心、女に振られて恨み節。そんなプライバシーの塊が「歴史の女神の手違い」で、燃やされず残った幸運に思いをはせる。

 ゴッホが自殺した時、持ってい…

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