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 長崎県と同県佐世保市が同県川棚町で計画する石木ダムの建設現場で、抗議の座り込みをする住民・支援者と県側の緊張が再び高まっている。県は住民らが現場に置いている私物の撤去を迫ったが、受け入れられないと判断。このままでは工期が遅れると、座り込み場所に土砂を運び込み、一帯を埋め尽くした。

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 県は現在、ダムで水没する県道の付け替え道路(延長3・1キロ)の工事を進めており、そのうちの1・1キロについて今年度中に終えるのを目標としている。

 《当該物件の所有者、占有者等は10月26日までに申し出てください。また、これらの物件を速やかに撤去してください》

 県石木ダム建設事務所長名で、住民らが座り込み場所近くにしつらえた物置やテーブルなどを撤去するよう求める看板が現れたのは今月12日。2週間の期限を設け、住民らに自己申告を求めた。

 6月上旬に立てられた看板は「6月19日までに撤去されない場合は当方にて撤去させて頂きます」だった。応じなければ私物を行政代執行で撤去すると言わんばかりの表現で、法律にのっとった手続きだとしたら疎漏だという指摘や、世論の反発もあった。「持ち主に名乗り出てもらう」というスタンスに変わったのは、「所有者本人に、個別にお願いしたいから」と県河川課は説明する。

 そうした低姿勢を強調する一方、県は10月16日午後、住民らが座り込み場所としていた140メートルの区間に土砂を運び入れた。座り込みを終えた住民らが正午ごろに帰宅後、3時間半ほどのことだった。この区間が厚さ1~2メートルの土砂で埋め尽くされた。県の予定では、この区間の盛り土工事は8月末に終えるはずだったという。

 「土地・家屋の所有権を奪われ、身ぐるみはがされた住民には、譲るものも何一つない。譲歩するかどうかは県の胸一つ」と語るのは住民の石丸勇さん(71)。ダムの必要性から話し合うべきだと主張する。

 一方、県河川課は「ダムの必要性を説明してくれと言うなら、いくらでも応じる。だが、ゼロベースから話し合うことなどあり得ない」という立場だ。

 住民らは土砂の脇などで座り込みを続ける。土砂をこれ以上運び入れられないよう、午前中だけだった座り込みを夕方まで延ばした。合間でやる通院や農作業も圧迫されている。(原口晋也)

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