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 阪神・淡路大震災で倒壊した住宅跡地に建てられたギャラリー「小さい芽」(兵庫県西宮市千歳町)が、今秋で25年目に入った。「被災した街に希望を」。オーナー夫妻はそんな願いを込め、被災した子どもたちや全国の作家の作品発表の場として笑顔の種をまき続けてきた。

 約30坪の敷地に、鉄筋コンクリートの3階建て。2階と3階が吹き抜けでつながり、長屋の雰囲気を思わせる細長い空間に、大きな窓から陽光がたっぷり降り注ぐ。オーナー夫妻の澤田隆さん(75)、のり子さん(74)は1996年9月、阪急夙川駅にほど近い自宅敷地内で、このギャラリーを始めた。

 開館1年半前の「あの日」。隆さんの母の國子さん(故人)が住んでいた木造2階建ての母屋は全壊し、夫妻が住む離れも半壊した。美術教師を定年まで勤め上げた國子さんは、1階部分がつぶれた母屋から数時間後に助け出されたが、ショックでふさぎこんでしまっていた。

 「震災後は壊れた建物が片付けられて月の表面のようになっていた。元の街並みが戻るのか不安だった」とのり子さん。國子さんを元気づけるだけでなく、地域の人たちが戻って来る目印になるようなものを――。夫妻は跡地にギャラリーを建てることにした。

 のり子さんは、もう一度文化の薫り高い街だった夙川になって欲しい、との思いを込めて手紙を書いた。宛先は、ファンだった建築家の安藤忠雄さんだった。

 思い切ってギャラリーの設計を依頼したところ快諾してくれた。「小さい芽」という名前も付けてくれた。のり子さんは「復興のため忙しいなかで、うちのような小さい依頼を受けてくださった。ギャラリーは安藤さんから預かっているという気持ちでいこうと思いました」と振り返る。

 開館した年には安藤さんの企画で震災を経験した子どもたちの絵画展を開き、それ以後、10年間続けた。絵を見に来た親に褒められた子どもたちの舞い上がりそうな顔、「元気をもらいました」と帰っていく大人たち。毎年1月には、隆さんが撮影した震災直後の写真などを展示する企画展を開催した。掘りごたつがある1階では國子さんが絵手紙を書き、来場者と交流を続けた。

 小さい芽は大きく育って種を飛ばす。のり子さんは、安藤さんがそんな思いをギャラリーの名前に込めてくれたのだと思っている。「たくさんの方に支えられ、これまでいろいろな場面に立ち会わせていただいた。皆さんが非日常を感じたり安らいだりして、また元気でいこうと思える展覧会をこれからも開いていきたい」(石田貴子)

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 小さい芽では25日まで、「阪神淡路大震災復興25年展『LOVE CATSと愛しの動物たち』」と題した企画展を開いている。保護猫や保護犬を支援している作家5人による絵画やシルバーアクセサリー、手織りのストールなどを展示販売する。会期中は無休。入場無料。問い合わせは小さい芽(0798・33・3345)。

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