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 海洋冒険家の白石康次郎さん(53)は2016年、「最も過酷」とされる単独無寄港・無補給の世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に、アジア人として初めて挑戦しました。途中、マストが折れてやむなく棄権しましたが、それでも「俺はあきらめないよ。なぜ? やりたいから」。この秋、4年に1度のレースに再び挑み、11月8日、フランスを出発する予定です。白石さんに冒険への思いを聞きました。(文・吉永岳央 写真・角野貴之)

 ――単独無寄港・無補給の世界一周レース、ヴァンデ・グローブの魅力とは?

 本当に、人生を懸けた冒険ということでしょう。完走率は50%程度。生きて帰ってこられるのかすら分からない。それでも、チャレンジする。だからこそ、リタイアしようが何をしようが、人の心を揺さぶる何かがある。みんな私財をなげうって、人生を懸けています。失敗するかもしれないからやめる、成功の保証がある。そんなことには、誰の心も動きません。

拡大する写真・図版鎌倉の海を眺めながら育った。「水平線の先には何があるんだろう」。いつか世界一周を――。そんな夢を抱いたのは、自然の流れだった=8月、神奈川県鎌倉市の材木座海岸

過酷なヨットレースへ

 ――3カ月間のヨットレースにはどんな苦労が?

 寝ている時も、トイレにいる時も、2千時間ノンストップ。一度スタートしたら、どんなトラブルが起きようが時計はもう止まりません。1時間以内の仮眠しかできないし、けがをしても休めない。最悪、自分で自分を手術して先に進まないと。船が壊れたら、自力で直さないといけない。体力も精神力も削られます。でも、大変だからこそ、最高に充実していて楽しい。

 ――今秋のレースに出るために、約20億円を集めたと聞きました。

 よく質問されます。「どうすればそんなにスポンサーを集められるの」って。僕の企画書に、もうけ話は一つも書いていない。成績を出したって、企業の商品は売れませんからね。企画でもテクニックでもない、結局はハートの部分。なぜ僕のサポートを?とスポンサーに聞いたことがあります。みんな、「人柄だよ」と。エネルギッシュで「楽しいんです。最高に!」って、うそ偽りなく全てをヨットに懸けている。採算が合わないと初めから分かっているんだから、常識でやろうとしても無理です。

拡大する写真・図版ヨットに乗る白石康次郎さん=2019年11月、矢部洋一さん提供

 ――海の上に、ひとりぼっちで3カ月。孤独では。

 その質問には「なぜ孤独だと思うんですか」と返したい。

 僕には夢があり、希望があり、目の前にみんなと作った愛艇がある。水平線の先にはライバルもいて港では家族が帰りを待っている。どこに孤独がありますか。都会の真ん中で夢も目標も希望もなく、肩が当たる満員電車に揺られている人こそ孤独かもしれない。大切なのは、あなたが今、好きなことをやれているかどうか。1人だから孤独? 違う。自分と対話できているかどうかで、現状の捉え方は違ってくるはずです。

負けっぷりを見せたい

 ――前回大会は途中リタイアながら、帰国後にテレビ局から表彰されました。

拡大する写真・図版2016年のヴァンデ・グローブ。はかま姿で木刀を持って出港した。「1万数千人の港町に125万人が集まった。みんなもう生きて会えるか分からない。独特な雰囲気です」=仏レ・サーブル・ドロンヌ、矢部洋一さん提供

 子どもたちに負けっぷりを見せたいと思って、堂々ともらいました。表彰式にはリオデジャネイロ五輪のメダリストがずらり。でも、僕もこれ以上は絶対に無理ってくらい一生懸命やりきった。だから、めちゃくちゃ悔しいけど、恥ずかしくなんてない。それで負けたのはもう、仕方ない。勝負は勝ち負けがあるから面白いんです。負けるのは悪いことじゃない。全力でやった失敗には、学べることがある。ダメなのは、やりたいことがあるのにチャレンジしないことですよ。

少年時代の思い出、そしてなぜいつも明るくいられるのか。インタビュー後半でたっぷり語ってもらいました。

先生の言うことを聞いていても

 ――どんな少年時代だったのでしょう。

拡大する写真・図版白石さんの地元、材木座海岸。この海の先を知りたくて船に乗った=神奈川県鎌倉市

 勉強はできませんでした。先生…

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