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 長崎県内の児童相談所(長崎市、佐世保市)の児童虐待相談の対応件数が2019年度、初めて1千件を超えた。全国で相次ぐ悲惨な虐待死事件を受けて児相は県警との連携を強めており、県はより幅広く対応できた結果だとみている。一方、職員の負担は増えており、県は運用の改善に努めている。

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 無職の両親と暮らす、不登校の女の子(9)。担任が家庭訪問で、頰にアザを発見した。児相職員が電話をするも、父親は「コロナに感染せんように、学校ば休ませとるだけ」と、出頭にも応じない――。

 こんな想定で21日、児相職員や警察官ら約30人による「臨検・捜索」の訓練があった。子どもの安否が確認できないとき、裁判所の許可を得て強制的に住宅に立ち入る措置だ。前段に当たる任意の「立ち入り調査」は昨年5件あったが、臨検・捜索に踏み切ったケースは県内ではまだない。

 臨検・捜索や立ち入り調査には警察官が同行する。県警少年課の担当者は「実際の現場では刃物を持っていたり、もう1人子どもがいると判明したり、何が起きるか分からない。対応を確認しておくことが重要だ」と訓練の意義を語る。

 県こども家庭課によると昨年度、県内の児相が対応した虐待事案は過去最多の1053件(前年度897件)。保護者から引き離す「一時保護」も364件(同276件)と増えた。

 対応した虐待事案の半数近い509件は警察からの通告に基づくもので、福祉事務所は100件、学校など62件、近隣・知人51件、医療機関27件だった。

 背景にあるのが警察との連携強化だ。

 2018年に東京都目黒区での女児虐待死事件を受け、厚生労働省は同年夏、外傷がある、48時間以内に安全確認ができないなど緊急性の高い例について警察との情報共有の徹底を児相設置自治体に通知した。

 県はこれを受け、刑事事件化が予想されるケースに絞っていた情報共有の対象を拡大。19年6月からは「要保護児童対策地域協議会」に各警察署の生活安全部門担当者を加え、虐待を認定した全ての子どもの氏名や家族構成、対応の経過を共有している。

 警察との情報共有は保護者の萎縮につながるとして慎重な運用を求める声もあり、厚労省によると2月時点で全件共有しているのは児相を設置する70自治体の3割程度にとどまる。県の担当者は「子どもの安全を最優先に考えるとメリットの方が大きい」と話す。

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 課題は児相職員の負担増だ。県内での虐待対応件数は2009年の197件から約5倍に増えた一方で、正職員の数は今年度で69人と、09年当時(59人)から10人しか増えていない。

 「1人の持ちケースが増えすぎると緊急対応が優先され、継続的に面接などが必要なケースが滞る恐れがある」と県担当者は話す。

 県は警察と情報を共有する際に新たに書類を作らなくても済むようにシステムを改修したり、臨時職員を採用したりするなどの対策を取ってきた。

 市町との役割分担も進める。家庭内暴力(DV)を子どもが目撃する「面前DV」は心理的虐待に当たり、警察などからの通告も増えているが、「比較的緊急度の低い場合が多い」。そこで、こうしたケースはすぐに市町の福祉担当部局に引き継げるよう協議。早ければ来年度にも運用を始める。(榎本瑞希)

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