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 ハンセン病の回復者が暮らす瀬戸内海の離島、大島(高松市)は島全体が国立療養所大島青松(せいしょう)園となっている。そんな島の歴史を若い世代に伝えたいと、高松市の映画監督、木山みどりさん(61)が2本の短編映画をつくった。自身の経験をもとに島の回復者と女子中学生の交流を描いた。

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 「初めて会った。声が出なかった」。祖母に連れられて大島を訪れた主人公の中学生は、顔に傷のある回復者のおばあちゃん「瑠璃(るり)さん」に出会い、言葉に詰まる。どう接すればよいのか最初は戸惑っていたが、別れ際に、思い切って瑠璃さんの手を取って握手したことで打ち解ける。「また来るよ」と船から手を振る――。

 2016年に撮影し、5分半にまとめた短編映画「瑠璃の島」。登場する瑠璃さんは、実際に大島青松園で暮らす80代後半の回復者だ。その前年の15年、木山さんが初めて島を訪れたときに偶然出会った。

 木山さんは普段は放課後児童クラブの補助員として働く。12年に映画制作を学ぶワークショップに参加したことがきっかけで、ほかの参加者らと一緒に一眼レフやドローンを使って映画を撮影し始めた。坂出市を舞台に親子の絆を描いた「カンカンSUN」は、16年のさぬき映画祭で審査員特別賞を受賞した。

 5年前、大島に初めて足を運んだのは、カンカンSUNに出演した俳優の中越恵美さん(70)に誘われたのがきっかけだった。島の教会でのミサの参加者の中に、瑠璃さんがいた。

 回復者にどう接すればいいのか不安だったが、瑠璃さんの笑顔に、苦しみだけを抱えて生きてきた人という先入観が吹き飛んだ。「この笑顔を映像に残したい」。本人に許可をもらい、カメラを回し始めた。

 若い人が興味を持ちやすいようにと、主人公を中学生に設定し、回復者との交流を描くことにした。知り合いのモデルで当時中学生だったLILI(リリ)さん(19)に主役を依頼し、祖母役は中越さんが演じた。回復者として瑠璃さんに登場してもらった。作品は17年のさぬき映画祭のショートムービー部門に出品。上映された32作品中、9位に入った。

 主役を演じたLILIさんは映画の完成後も毎年、大島に渡り、瑠璃さんを訪ねるようになった。

 今度は2人のありのままの姿をカメラにおさめようと、3年にわたり、LILIさんと瑠璃さんの交流に密着し、今年2月に約20分間のドキュメンタリー作品「瑠璃の島~これから~」として発表した。

 作品では、LILIさんが瑠璃さんら回復者との交流を通して大島への理解を深めていく様子が描かれている。10代の患者が親と離されて島に連れて来られたこと、軽症の患者が重症者を介助させられたこと――。大島の歴史を知り、LILIさんは自分に何ができるかを考える。

 大島のことを若者を中心に多くの人に伝えたいと、木山さんは、セミナーや学校などで作品の上映会や講演会を続けている。

 今月7日には、香川県立高松東高(高松市)で2作品が上映され、木山さんが講演した。生徒たちは「教科書よりハンセン病をリアルに感じた」「悲しそうな瑠璃さんの顔を見て、いろんなつらい経験をしたんだと想像した」とそれぞれ感想を語った。

 木山さんは「若い人が映像を見て、島や回復者について知るきっかけにして欲しいと思います。コロナ禍で島に行きづらい状況が続きますが、今何ができるかを一緒に考えてもらえれば」と話した。

 2作品のうち「瑠璃の島」は、さぬき映画祭公式サイトの「ショートムービーコンペティション2017」(https://www.sanukieigasai.com/story-project/short-movie/2017.php別ウインドウで開きます)から見ることができる。(木下広大)