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 性の多様性が尊重され、多様な生き方を認め合う社会を実現させようと、三重県は今年度、新たな条例の制定を目指している。伊賀市の男性カップル、加納克典さん(41)と嶋田全宏(まさひろ)さん(44)は条例に「パートナーシップ制度」が盛り込まれることを期待し、賛同の声を広めようとしている。

 パートナーシップ制度とは、同性のカップルなどを公的に認めるもので、県内では伊賀市が2016年4月、全国で3番目に導入した。同市では20年10月現在、4組が認定を受けており、加納さんと嶋田さんはそのうちの1組だ。

 2人は田舎暮らしに憧れ、16年8月に大阪市から伊賀市に移住した。移住の決め手の一つが、市の移住担当者らが性的少数者に関して知識、理解をもっていたことだ。「パートナーシップ制度ができたばかりで、勉強をしていてくれたのかもしれない」と嶋田さん。男性カップルで田舎に住めば、差別されるのでは、などの不安があったが、行政の後ろ盾がある安心感から移住を決めた。

 加納さんはずっとゲイであることを隠して生活していた。「制度を使いたい、と窓口で言うだけでもすごく抵抗があった」と加納さん。だが、手続きは人目に付かない個室で行われた。「あっさり終わって無駄な心配だった」と振り返る。地域の人たちも2人を温かく受け入れてくれているという。

 伊賀市では、パートナーとして認定されると、市立病院で相手の病状を聞いたり、手術の同意ができたりするほか、市営住宅にも入居できる。だがそうした点よりも、精神的に得られたものが大きいという。「今まで自分たちは普通じゃない、社会から認められていないという不安を感じていた」という嶋田さん。「自治体がこういう家族の形を認めてくれることで生きる自信、プライドにつながった」と話す。

 2人は今、県条例にパートナーシップ制度が盛り込まれるよう、地域の人や知り合いなどに条例へのパブリックコメントを送ってもらえるよう働きかけている。

 「同性婚には遠く及ばないけど、制度は人権の保障につながる」と加納さん。周りに働きかける中で、性的少数者の問題に興味を持ってくれる人も増えてきたという。「制度が導入されるかは分からない。でもみんなで考えるという過程に価値があると思っています」(甲斐江里子)

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 三重県は「性の多様性を尊重し、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例(仮称)」の中間案に対するパブリックコメントを募集している。11月13日まで。県ホームページからファイルをダウンロードし、メールやファクス、郵送で提出する。問い合わせは県ダイバーシティ社会推進課(059・224・2225)。