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 和歌山県議に対して支出されている2019年度分の政務活動費について、県議から提出された報告書などを朝日新聞が調べたところ、親族への支出や、県政との関係が分かりにくい資料の購入などが確認された。議会事務局の確認を経た支出だが、識者は使い道の透明性を高める必要性があると指摘している。

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 昨年4月に県議選があったため、今回調査したのは昨年5月~今年3月分。

 県議会の「政務活動費の手引」では、「社会通念上の妥当性の観点から充当することの適否を判断する」「親族の雇用、親族所有の不動産の賃借については慎重に」「実費弁償が原則」などと、政務活動費の基本的な考え方が記されている。

 会派、改新の県議は、同居する母親が所有する建物に政務活動用の事務所を構え、計55万円を支出した。「手引」では、議員本人や生計を一にする親族からの建物の賃借は認められていない。「母親には年金収入もあり、扶養もしていない。生計は別で、確定申告も別々にしているので問題はない」と説明し、支出は妥当との認識を示す。

 自民の県議は、実家が営む事務用品店に、ファイル代やファンヒーター代などとして約14万円を払った。地元の岩出市にお金が落ちるよう、地元にある事務用品店を使い分けている一環での支出といい、実家から購入した分は「価格面や納期を考えて選んだ」。「手引」には、親族経営企業への支出について規定はないが、富山市議会では3等親以内の親族や同居人が代表を務める法人には経費が支払えない例を指摘すると、「他府県の事例を踏まえて、今後については検討したい」と話した。

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 資料購入費について、県議会は「趣味や嗜好に係る書籍等」は「充当に適しない」としている。

 自民の県議は、「江戸川乱歩名作選」「投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代」「ドラフト最下位」などを購入し報告。「本を読むと作者の思いや考えを知ることができ、人の心情に寄り添えるようになる。経験したことのないことも本を通じて疑似体験できる」と説明した。自民では、「人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?」や、池井戸潤氏の小説「七つの会議」、太宰治「人間失格」を購入する県議もいた。それぞれ「地元紀の川市のキャンプ場を冬場も活用できないかとテントサウナについての本を手に取った」「小説を読むことで人間関係のあやを感じられる。資質を高めるために読んでおり、事務局も認めている」と述べた。

 「手引」では、資料購入費を使う場合は、書籍名などを明記する必要があるとしている。自民のまた別の県議は約46万円分の資料購入費について、書籍名が記されていなかった。同県議と県議会事務局によると、書籍名のリストは別に事務局に提出され、支出が妥当かの確認を受けている。現在、リストは同県議の元へ返されているという。朝日新聞が県議の事務所に複数回問い合わせたが、「県議に確認する」という回答のみで、リストの閲覧はできなかった。

 レシートに記された書籍番号によると、同県議は池波正太郎の剣客商売シリーズ「陽炎の男」を購入していたことが分かった。「剣客商売」を購入したことについては「手違いでレシートが紛れ込んだかもしれない」と釈明。「一般的に見て疑惑をもたれないようにしないといけない」として今後の対応を検討すると話した。

 また、自民の県議の報告書で、約2万6千円分の支出について書名の記載が抜けていたものがあった。この県議は「事務処理のミスだと思う。申し訳ない」と話した。

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 他の項目でも、支出の妥当性が分かりにくいものがあった。

 改新の別の県議は、東京で行われた、著述家・高島康司氏の講演会に8回参加。参加する際の旅費などとして計約38万円を支出したが、報告書に記された会の内容は「大きく変動する世界情勢の中で日本はどうあるべきか、そして今後の地方(和歌山)のあり方はどうか提言を聞き、議論する」など、一言一句同じ記述だった。取材に対し、県議は「講演の内容は、『マスコミではこう言っているが実際はこうだ』というような、裏情報的な話」と説明。内容の詳細を書かなかったのは「本などと同じで、細かい内容までは必要ないと思った」。

 東京、千葉などへの調査や陳情9回のうち5回、現地で交通系ICカードに5千円をチャージ(入金)をしたが、利用経路などが記されていない自民県議がいた。「手引」では、政務活動費は政務活動に要した費用の実費に充当することが原則とする。また、交通系ICカードは交通費以外にも、自動販売機やコンビニなどでも使うことが可能だ。この県議は「空港から会場、会場から会場をモノレールなどで移動した際の交通費として実際に使った。事務局にも説明してある」と話した。(藤野隆晃、西岡矩毅)

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 筑波大・竹中佳彦教授(政治学)の話 県議会事務局は、議会が政策を立案し、行政を監視する活動が十分に行えるよう補佐することが期待されており、議会のチェック機関ではない。県議は、選挙で県民から選ばれている県民の代表であり、県職員よりも優位な立場にある。県議会事務局職員が、グレーゾーンのものについて判断するのは難しいだろう。

 (使い道を)県民の目にさらすことが一番のチェック方法だと考える。会計帳簿や領収書をインターネットで公開することが重要だ。すべての人がチェックするわけではないだろうが、いざという時にチェックできるようになっているだけで抑止効果がある。政務活動費は議員が「調査研究」をするためのもので、その成果を県民にわかるように示すべきだ。活動報告書や視察報告書も、県民にインターネット上で公開すべきだろう。

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 〈政務活動費〉 県政の課題や県民の意思を把握し、県政に反映させる活動などの経費。調査研究、研修、会議への参加などに充てられる。地方自治法や条例に基づき、会派と各議員に交付される。全額県費で、県議へは月額27万円が支給される。残りがある場合は返還される。

 支払いの領収書も含めてウェブ上で公開している議会も多いが、和歌山県議会の場合、ウェブで公開しているのは収支報告書のみ。領収書や支払い証明書を閲覧する場合、議会事務局に申し込む必要がある。

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