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 福井県内でツキノワグマの出没が多発し、人身被害も出ている。県によると、4~9月の出没件数は過去最多で、今年は平野部への大胆な出没例もある。木の実の不作が原因とみられ、県は12月ごろまで出没する恐れがあるとして、庭木を伐採するなどの対策、警戒を呼びかけている。(大西明梨)

 23日午前8時半ごろ、敦賀市の北陸新幹線の工事現場付近に、体長約1メートルの成獣のクマ1頭が出没。JR西日本の50代男性社員が耳や肩などをひっかかれ、約10分後、別会社の40代男性作業員が足を骨折するなどの重傷を負った。クマは約2時間半後、猟友会によって駆除された。近くには住宅街があり、市の担当者は「市内で人出が多い平野部に出没するのはあまりない」という。

 9月30日には、勝山市の民家の庭に体長約1・2メートルの成獣1頭が出没。庭作業中の70代男性が襲われ、顔や腕に軽傷を負った。庭には柿の木があり、ふんも大量にあったことから、数日にわたって柿を食べに来ていたとみられる。

 県によると、今年度は越前市、小浜市、大野市で各1件、南越前町と敦賀市で各2件、勝山市で3件の計10件の人身被害が起きている。今年度の出没件数は772件(10月19日時点)。4~9月の出没件数は517件で、統計を始めた2004年度以降で最多だった昨年度の391件を大幅に超えた。

 大量出没の原因として、主要なエサとなる木の実の不作が考えられるという。ミズナラやコナラは不作で、ブナは凶作。数年に1度、不作が重なる「裏の年」があり、今年はそれに当たった。昨年も同様で、2年連続で裏の年になるのは、県が豊凶調査を始めた05年以降で初めてという。

 今年の不作は深刻で、クマはエサを求めて長距離移動するようになった。福井市大和田の商業地付近や、坂井市の文化施設「ハートピア春江」の近くなど、平野部での出没も相次いでいるのが特徴という。

 庭木の柿などの果実に誘われる事例が多く、県は果実の収穫や木の伐採などを呼びかけている。冬眠に入る12月ごろまでは注意が必要で、県の担当者は「例年以上に人身被害に警戒してほしい」と話す。

 各自治体も、パトロールや注意喚起のチラシ配布など対応にあたる。勝山市では、柿の木の伐採を業者に委託するなどの費用として、個人に上限2万円、地区には上限5万円を補助。市役所の駐車場には、柿の実を捨てられる回収車も常駐している。

 広島県廿日市市の「日本ツキノワグマ研究所」の米田(まいた)一彦理事長(72)によると、今年は東北から北陸の日本海側の地域で出没が増えているという。

 4~6月ごろにコロナ禍で人や車の往来が減り、クマが市街地まで出てきやすかった。行動範囲を広げたクマが、引き続き市街地に現れる可能性がある。長野県では、コロナ禍で人気が高まっているキャンプ地で遭遇した例もあるという。

 平野部は隠れ場所がないため、緊張状態にあるクマは人を襲いやすくなる。朝夕の散歩を控え、外出時には鈴やラジオを携帯することが重要だ。遭遇してしまった場合は、クマに見られている間は動かず、そっぽを向いた隙に電柱などに隠れると良いという。

 米田理事長は、近年は過疎化で里山が減り、人とクマの生息域は近くなったと指摘。「大量出没は珍しいことではなくなるだろう。今年を特別とするのではなく、常に注意する心持ちでいるべきだ」と警鐘を鳴らしている。

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